脱炭素

世界的な気候変動と異常気象に対抗するべく、国際的に取り組んでいるのが「脱炭素化社会の実現」だ。時代の流れに取り残されないよう、事業運用を見直さなければならない。

まずは、脱炭素化社会の実現に向けて企業に求められている行動を知ろう。国内の先行事例を参考に、自社でできることを探してみよう。そうして脱炭素化に取り組むと、実はビジネスにメリットがあるのだ。

脱炭素社会とは?

脱炭素化社会とは、地球温暖化の原因となっている「温室効果ガスゼロ」を実現する社会のことである。

温室効果ガスはその多くが二酸化炭素であり、それを発生させる行動を減らさなければならない。エネルギーにおいては、化石燃料を使った発電に頼るのではなく、太陽光発電や風力発電、地熱発電などの再生可能エネルギーの積極的な活用が有効だ。

そうして二酸化炭素の排出量を段階的に減らしていき、最終的にゼロにする。あらゆるものの運用を見直した「脱炭素社会」の実現に向けて、各国政府や企業が省エネ化と再エネなどへのエネルギー移行を進めている。

脱炭素社会に向けた日本の目標

世界的な脱炭素化に向けて、2015年にパリ協定が採択された。そこで温室効果ガスの排出と吸収のバランスを保ちながら、最終的に温室効果ガスをゼロにすることを目指すという目標設定だ。

そこで日本が掲げた目標は「2030年度までに2013年度に比べて温室効果ガスを26%削減する」こと。実現に向けて、省エネ化と化石燃料の削減が求められる。

ここには、発電時に二酸化炭素を排出しない再生可能エネルギーの拡大も含まれる。政府は、主力電源を太陽光発電や風力発電に転換する方針を掲げた。

脱炭素化を推進する国際ビジネスイニシアチブ

パリ協定の達成を目的として、国際ビジネスイニシアチブが拡大を続けている。国際環境NGOのThe Climate Groupが運営する「RE100」「EP100」「EV100」は、日本でも加盟企業が増加傾向にある。

それぞれの概要を下記にまとめよう。

名称概要
RE100100%再生可能エネルギーで事業運営を行うことを目標に掲げる
EP100事業エネルギー効率を倍増することを目標に掲げる
EV100企業に環境整備促進やEV(電気自動車)の使用の促進を目指す

これらが求めるものは、行動だ。目標を策定し、コミットして報告する。これら全てに加盟するのではなく、各企業の事業内容に合わせて選ぶのが一般的だ。

日本のRE100加盟企業と取り組み

企業が脱炭素化に取り組むメリット

脱炭素

企業として脱炭素化に取り組むメリットは様々だが、自社の存在をアピールする効果にも注目してみよう。

省エネや創エネに関する技術・製品・サービスを世界に発信できる。技術力をアピールし、大きなビジネスチャンスが得られる可能性があるということだ。

投資家にアピールする効果もある。世界の気候変動をビジネスリスクと捉える機関投資家らが、環境を破壊せず持続可能なビジネスに注目している。先に解説した国際ビジネスイニシアチブに加盟することで存在をアピールし、投資を呼び込むことができるのだ。

大手企業が脱炭素に取り組むことで、取引先である中小企業も同じように脱炭素化が求められるようになるだろう。裏を返せば、中小企業が脱炭素化に積極的に取り組むことで、大手企業から新たな取引先として選ばれる可能性が高まるということになる。

https://www.tainavi-next.com/library/253/

脱炭素化で成果をあげた企業例

世界的に多くの企業が取り組む脱炭素化だが、実際に日本国内の企業で脱炭素化の成果をあげた事例を紹介する。

株式会社リコー

リコーは、100%再生可能エネルギーでの事業運営を目指す「RE100」に日本で初めて加盟した企業だ。

具体的には、2030年までに事業に使う電力の30%以上を再生可能エネルギーに変え、2050年までに100%再生可能エネルギーでまかなうことをコミットしている。

その成果のひとつとして、中国の生産会社の屋根にPPAモデル(太陽光発電の無料設置)を導入した。また発電容量2.8MWのメガソーラーの利用も始めている。英国の生産会社においても、再生可能エネルギーの電力に切り替えた。

この取り組みによって、二つの生産会社のCO2排出量を約5000トン削減できる見通しを立てている。

ソニー株式会社

ソニーは「RE100」に加盟しており、2040年までに事業活動における使用電力を100%再生可能エネルギーにすることを目標に掲げている。

これまでの成果として、太陽光パネルの設置や、「再エネ証書スキーム※」などの取り組みによって2017年度までの2年間でCO2を累計約15.4万トン削減した。

※再エネ証書スキームとは

再生エネルギーによる環境付加価値を、第三者認証機関の認証を得た証書発効事業者が「グリーン電力証書」として取引する仕組み。

大和ハウス工業株式会社

大和ハウスは、建設業の企業として世界で初めて「EP100」「RE100」に加盟した。省エネ効率50%を目指す「EP100」では、事業活動におけるエネルギー効率を、2030年に2015年比で1.5倍、2040年に2015年比で2倍にすることを目標にしている。

再生可能エネルギー使用100%を目指す「RE100」では、2040年に使用電力を100%再生可能エネルギーでまかなうことを目標にしている。

成果としては、住宅商品における断熱性能の向上が挙げられる。またエネルギー効率の高い設備の導入により、室内環境の質を維持したまま省エネを実現した。

さらに、再エネの導入により、年間の電力エネルギー消費量の収支をゼロにすることを目的としたZEH※住宅の普及に努めている。

自社活動としては、2016年から、室内環境の質を維持したまま、年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロにすることを目的としたZEB※店舗を運用している。2018年には、100%再生可能エネルギーで運営する電力自給オフィスを竣工した。

※ZEH(ゼッチ):ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの略
※ZEB(ゼブ):ネット・ゼロ・エネルギー・ビルの略

脱炭素社会を実現するために企業に期待されること

脱炭素化社会を実現する上で、政府の努力だけでなく企業や一般家庭においても、電力を節電する「省エネ」や、再生可能エネルギー発電などから電気をつくる「創エネ」などを意識することが重要だ。

日本企業は、その高い技術力によって省エネや創エネに関する製品の開発が期待されている。また、企業における運輸に使われる車を電気自動車に置き換える、工場や倉庫の屋根に太陽光発電システムを導入するなどの、再生可能エネルギーの創出も求められている。

https://www.tainavi-next.com/library/224/

脱炭素社会に向けて再生エネルギーへの切り替えを検討しよう

脱炭素化社会に向けて、大手企業はさまざまな取り組みを始めており、具体的な成果をあげている。企業にとって省エネや創エネそれぞれに多様な選択肢があるが、自家消費用太陽光発電の導入もそのひとつだ。

太陽光発電で創エネすることによって、毎月の事業に使用する電力のランニングコストの大幅引き下げが見込める。もちろん、設置できる設備や立地によって発電量は変わるし、電気の使い方でコストカット効果は大きく違ってくる。まずは、専門家のシミュレーションを受けながら、自家消費用の太陽光発電を検討してみよう。