産業用太陽光発電には、投資型太陽光発電と自家消費型太陽光発電とがあります。投資型太陽光発電(全量売電型)はFIT価格が年々下落しており、2025年現在では売電単価は8.9円/kWh(2025年度・10kW以上50kW未満)となっています。
一方で、2021年から2025年にかけては燃料高騰により電気料金が断続的に値上げされ、新電力会社の倒産・撤退が相次ぎました。その影響で、一部の法人は最終保障供給制度による電力供給を受けざるを得ない状況に追い込まれ、現在は電気料金高騰リスクから市場連動型電気料金プランが主流となっております。また、国からの電気料金補助は2025年9月をもって終了しました。
このような電気料金高騰の背景だけでなく、省エネ法改正により年間のエネルギー使用量が原油換算で1500キロリットル以上の工場・店舗などの約1万2000事業者を対象に屋根置き太陽光パネルの導入目標策定が義務化が2026年より本格的にスタートします。
(最新情報)国としては更なる普及に向け、初期投資金額を早期に回収できるモデルとして2025年10月より『初期投資支援スキーム』がスタートし、事業用のFIT価格が11.5円/kWh(20年間)から19円/kWh(20年間※最初の5年間が19円)へと約1.7倍に大幅に引き上げられます。
こうした電気料金の高騰対策として、自社での電気料金削減を目的に、工場や事業施設で自家消費型太陽光発電を導入する事例が今後ますます増加すると見込まれています。ここでは、自家消費型太陽光発電について解説します。
自家消費型太陽光発電のメリットとは?
自家消費型太陽光発電とは、発電した電気を自社で自家消費することを優先し、余った電気は売電することを目的とした太陽光発電です
完全自家消費の場合は売電を行わないため、固定価格買取制度(FIT)に基づく事業計画認定の申請や、電力会社への連系負担金が発生しないケースもあります。
経済産業省の外局である資源エネルギー庁が発表した第6次エネルギー基本計画(2021年10月閣議決定)では、2030年に向けて再生可能エネルギーを主力電源とする方針が示されており、自家消費を推進するために、工場や倉庫の屋根へのソーラーパネル設置努力目標義務の策定・報告や、分散型電源の普及支援が盛り込まれています。
た、近年は燃料価格の変動により、電気料金に含まれる燃料調整費用や再エネ賦課金(2025年度は過去最高の3.98円/Kwh)の負担が増えており、電気料金の高騰リスクを回避する手段として、自家消費型太陽光発電の導入が企業にとってますます重要となっています。
【自家消費型のメリット】電気料金の削減
自家消費型のメリットは、何と言っても「発電した電気量=電気料金の削減」です。発電した電気はすべて自分たちで使用するので、これまでのように電力会社から電気を買う必要がなくなります。
また、太陽光発電システムの導入費用は、電気代の削減額で回収することができますし、余った電気は高いFIT単価(19円/kWh)で売電も可能です。 特に近年では電気料金が高騰しているので、電力会社の切替により電気料金の削減メリットは低い状況です。
こういった背景から、電気を買う動きから自家消費型太陽光発電型を導入して自家消費するメリットが年々高くなっております。
蓄電池を組み合わせた自家消費が増えている
2025年以降も、太陽光発電と蓄電池を組み合わせた自家消費型の導入は拡大を続けています。
当然、太陽光発電だけでなく蓄電池に対しても国からの補助金が用意されていますが、蓄電池導入が進んでいる理由はそれだけではありません。電気料金の高騰に加えて、近年ではリチウムイオン電池の価格が下落傾向にあることも要因の一つです。
特にEV(電気自動車)向け蓄電池の量産化により、性能向上と価格下落が進み、それに伴って定置用蓄電池も徐々に価格が下がってきました。
たとえば、2025年度の定置用産業用蓄電池(20kWh以上)の目標価格は11.9万円/kWh(税抜・工事費込み)とされており、2026年度以降もさらなる価格低減と導入支援策が講じられています。
引用:令和7年度予算 二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業の公募について
また、目標価格を上回る場合でも、業務用は1kWhあたり3.9万円、家庭用は4.1万円を上限として補助金を受けられる仕組みとなっています。
なお、長期的な価格目標としては、2030年度までに業務・産業用で6万円/kWh、家庭用で7万円/kWh(工事費込み)の達成を目指しています。
仮に蓄電容量32kWhの業務用蓄電池を導入する場合、2025年度の目標価格(11.9万円/kWh)に基づく導入価格は約380.8万円となります。
国の補助金(1kWhあたり上限3.9万円)を活用すれば、124.8万円が支給され、実質負担額は約256万円まで抑えられます。価格低減が進んでいることで、以前よりも導入のハードルが下がってきています。
海外の事例でも、たとえばドイツでは2010年代半ば以降、小型定置型リチウムイオン電池の価格が急速に下落し、2020年には鉛蓄電池よりも安価となりました。このようなグローバルな傾向は、日本における価格形成にも影響を与えています。
また、日本国内ではエネルギーリスクの高まりを受けて、自家消費型システムの必要性がより高まっています。2022年の地震による火力発電所の停止や、ロシアへの経済制裁によるLNG高騰の影響で電気料金が一時的に急騰したことは記憶に新しく、以降も電力供給不安が社会問題となりました。
こうした背景を受け、政府も分散型電源の普及や地産地消の電力活用を推進しており、エネルギー自給率向上に向けた解決策として、蓄電池の普及が今後ますます重要になると考えられています。
【蓄電池のメリット】ピークカットによる電気料金削減
蓄電池を導入する最大のメリットは、ピークカットによる電気料金の削減です。
ピークカットとは、年単位または日単位で電力需要のピークを低く抑えることです。
電力需要は、気温の変化による冷暖房の使用などで変化します。日単位でみると、業種によって多少差異がありますが、平日であれば10:00から14::00の間に電力需要のピークがあることが多いです。
蓄電池によるピークカットは、あらかじめ電力需要のピークをシステムに設定しておき、超えそうになった場合に蓄電池に貯まっている電気を放電することで、最大電力需要を低く抑えます。
次に電気代の基本料金について解説いたします。
オフィスビルや百貨店、スーパーなどで契約されている高圧電気料金プランの場合、実量制と呼ばれる方法で基本料金が決定します。
実量制とは、1か月でもっとも多くの電力を使用した30分毎の平均のうち、もっとも大きい値を「最大需要電力」と言い、この最大需要電力がもっとも大きかった値を基準として基本契約電力が決まります。
つまり、蓄電池でピークカットをすると、最大需要電力抑えることができるため、基本料金を下げることができるのです。
更に電気料金高騰している今だからこそ、太陽光発電で発電した電気を全て自家消費する為には、蓄電池に貯めて、一番電気料金が高い夏季料金で使用する電気を蓄電池で補う事も可能となります。
なぜ今、自家消費型なのか?
近年では、投資用(全量売電型)を目的とした太陽光発電の導入はFIT価格の下落や電気料金の高騰により大きく減少している反面、自家消費(余剰売電型含む)を目的とした再エネ導入が大幅に増えています。当然、脱炭素という流れで大手・中小企業では再エネ導入が加速していますが、なぜ自家消費型を目的した導入が増えているのでしょうか?
理由(1) 売電価格の下落
投資(全量売電型)目的の場合、FIT制度を活用することで、以前は発電した電気を20年間にわたって固定価格で全量売電できるモデルが主流でした。FIT制度が始まった2012年度の買取価格は43.20円/kWhと非常に高く、欧州と比較しても優遇された価格でした。
しかしその後、設備コストの低下に伴いFIT価格も年々引き下げられ、2025年度の買取価格は10kW以上50kW未満で8.9円/kWhとなっています。FIT制度に代わり、2022年度からはFIP制度(市場連動型買取制度)も導入されており、新規案件では自家消費やFIPを選択するケースが増えています。
かつては投資用は即時償却が可能な税制優遇制度も存在しましたが、現在は制度の見直しが進んでおり、活用には要件確認が必要です。
2025年現在、多くの法人が契約している電力単価は18〜22円/kWh前後であり、売電単価の約2倍に相当します。この価格差から、FITを活用した売電モデルよりも、自家消費型太陽光発電の方が経済的メリットが大きく、多くの企業が導入を進めています。ただ、2025年10月からスタートした『屋根型初期投資支援スキーム』により、余剰売電型の売電単価が約1.7倍となったことで、自家消費しながら余った電気を売電する余剰売電型の太陽光発電が増えると予測しております。
理由(2) 電気料金単価の高騰(市場連動型電気料金が主流)
電気料金は、家庭用、産業用ともに歴史的な値上がりが続いています。
2022年には、燃料価格の高騰と電力調達コストの増加により、新電力会社の撤退や倒産が相次ぎました。多くの電力会社が、電気の仕入れ価格が販売価格を上回る状況に陥り、大幅な赤字を抱えたことが背景です。
この状況を受けて、電力会社の多くは従来の固定料金プランから、日本卸電力取引所(JEPX)の市場価格に連動する「市場連動型プラン」への移行を進めてきました。現在では、法人向けを中心に、時間帯や需給状況によって電気料金が大きく変動する市場連動型電気料金体系が広がりつつあります。
市場価格の変動リスクを直接受ける形となるため、今後も燃料価格の変動や需給逼迫の影響(中東・ロシア)によって、電気料金が再び高騰する可能性も十分に考えられます。
電気料金の上昇にはさまざまな要因があります。ロシアに対する経済制裁による資源供給の不安定化に加え、中東情勢や為替の円安基調、原油・LNGの価格上昇など、複合的な国際要因が影響しています。
また、再エネ賦課金は、再生可能エネルギーの固定価格買取(FIT)制度の拡大に伴い、全国一律で電力使用者に課されている費用です。2023〜2024年には一時的な減額措置が講じられましたが、2025年度には再び上昇し3.98円/Kwh(過去最高単価)となりました。エネルギー多消費型の事業者には減免制度が設けられていますが、一般家庭や中小法人には依然として大きな負担となっています。
さらに、東日本大震災以降、多くの原子力発電所が停止し火力発電への依存が高まりました。一部の原発は再稼働していますが、火力燃料に依存する構造は続いており、燃料価格の高騰が電気料金に直接影響しています。特に燃料調整費には上限が設けられておらず、燃料費高騰がそのまま電気料金に反映されやすい状況です。
このような背景から、電気料金は変動を伴いながらも高止まり傾向が続いており、自家消費型太陽光発電を導入することで、電力コストを安定化させる効果が大きくなっています。
理由(3) 自家消費は税制優遇を活用できる(2027年3月31日まで)
2017年4月から、中小企業等経営強化法に基づき、太陽光発電設備や蓄電池を自家消費目的で導入する場合に、即時償却または取得価格の10%(資本金3,000万円超1億円以下では7%)の税額控除が選択できる制度が整備されました。
本制度は当初2023年までの予定でしたが、その後2年間延長され、令和7年(2025年)3月31日までの適用とされていました。しかし、2025年度の税制改正によりさらに2年間延長され、現在は適用期限が2027年3月31日までとなっています。
制度の申請にあたっては、最新様式・基準とスケジュールに必ず目を通すことが重要です。
理由(4) 補助金制度を活用できる
完全自家消費目的で産業用太陽光発電や蓄電池を導入する場合、現在は以下の補助金が活用できます。
- ストレージパリティ補助金
- 二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金の一部(令和6年度補正・令和7年度本予算)として、屋根設置型の太陽光発電と蓄電池の導入を支援しています。2025年は令和7年度本予算の二次公募中です。
- 補助単価(2025年度)
- 太陽光発電:定額4万円/kW
- 定置用蓄電池:定額3.9万円/kWh(※上限あり)
- DR補助金(家庭・業務用)
- SII実施の蓄電システム導入支援(ディマンドレスポンス対応)。2025年度は1kWhあたり約3.7万円、1申請あたり最大60万円
この補助制度は、地域の再エネ主力電源化や災害時のレジリエンス強化を目的としており、カーボンニュートラルや電力安定化をめざす事業者にとって有力な支援策です。
活用にあたっては、補助事業の公募期間や補助対象、要件(容量要件、DR対応、省CO₂効果など)を必ず公募要領で確認し、Jグランツ(ストレージパリティ補助金)やSII(DR補助金)などの公式ページから手続きすることをおすすめします。
理由(5)新電力への切替削減効果が減少
これまで、自家消費型太陽光発電を導入する企業の多くは、新電力の再エネプランに切り替えることで、電気料金の削減と脱炭素の両立を図ってきました。
新電力への切替でコスト削減効果が見込まれるのは、高圧契約を結んでいて、負荷率が低い企業です。 高圧契約では、年間で最も電力使用量が多いタイミングを基に「契約電力」が決まり、それに応じた基本料金が発生します。負荷率とは、この契約電力を基準に、実際にどの程度の電気を年間通じて使用しているかを示す指標です。
負荷率の計算式は以下のとおりです。(A、またはB)
- A. 負荷率=年間平均電力(kWh/h)÷年間最大電力(kW)×100
- B. 負荷率=年間の使用電力量合計(kWh)÷(契約電力(kW)24×365)×100
負荷率が低い企業は、契約電力に対して使用電力量が少ないため、従量制の新電力プランへ切り替えることでコスト削減できる余地があるとされてきました。
しかし近年は、燃料価格の高騰やJEPX(日本卸電力取引所)市場価格の乱高下によって、新電力会社の仕入れ価格が上昇。特に2022年〜2023年にかけては、多くの電力会社が固定単価型のプラン提供を中止し、市場連動型プランへと移行しています。
市場連動型プランは、時間帯や季節によって電気料金単価が変動するため、燃料価格が高止まりしていた時期には「切替=むしろ高くなる」ケースも多発しました。一方で、2024年〜2025年にかけては市場価格が落ち着きつつあり、企業の電力使用パターンやピークの時間帯によっては再び切替のメリットが出てきています。
現在では、固定単価・市場連動・ハイブリッド(ミックス)型など選択肢が広がっており、企業ごとの負荷率・使用時間帯・契約電力を考慮したプランの最適化が重要です。
※電気料金切替えを希望されている方は、タイナビの姉妹サイト「法人向け高圧・特別高圧の電気気料金比較サイト“スイッチビズ”」の利用を推奨しておりましたが、2025年は市場連動型電気料金プランが主流となるために、自家消費型太陽光発電の導入が電気料金を下げる一番の近道となるでしょう。
自家消費型太陽光発電のPPAモデルはあり?
自家消費型太陽光発電の導入を検討している方の中には、PPA事業者が太陽光発電の設置費用を負担してくれるPPAモデルも気になるところでしょう。
確かにPPAモデルは、大手上場企業を中心に導入が進んでいますが、中小企業では「与信審査のハードル」や「契約条件の制約」がネックとなり、利用できないケースも少なくありません。また、PPAでは電気料金削減のメリットが事業者との契約条件に左右されるため、自社設置と比較してコスト削減効果が限定的になる傾向があります。
さらに、PPA契約の途中で移転や廃業などにより契約を中断する場合には、高額な違約金や一括精算が発生するリスクもあります。こうした点から、PPAは慎重な検討が必要です。
一方で、タイナビNEXTでは、自社資金での設置(有償設置型)に特化した太陽光発電の一括見積もりサービスを提供しています。自社設置の場合、初期投資は必要ですが、補助金や税制優遇(例:即時償却や税額控除)などの公的支援を活用でき、長期的なコストメリットを最大化しやすいという利点があります。
導入後の柔軟性(将来的な蓄電池設置・FIP転)や経済性(投資回収期間)を重視するなら、有償設置型の選択肢もぜひご検討ください。

自家消費型太陽光発電の費用は?
自家消費型太陽光発電の導入費用は、設置する太陽光パネルの容量や枚数、パワーコンディショナ、架台、設置場所の条件、そして工事費用などによって変動します。
導入を検討する際には、まずはしっかりと見積もりを取得することが大切です。
また、どの程度の電気代削減が期待できるかについても、事前にシミュレーションを行い、費用対効果を確認しておくと安心です。
2025年度も、ストレージパリティ補助金などの公的支援制度を活用して、導入コストを抑えることが可能です。 補助金は先着枠や公募制のため、早めの情報収集と申請準備をおすすめします。また、2025年10月よりスタートした『屋根型初期投資支援スキーム』を活用して太陽光パネルを設置し、自家消費しながら余った電気を高い売電価格で売る方法もお勧めです。
タイナビNEXTなら、最大5社から無料で見積もりを取得できます。自社に合った最適なプランを比較・検討するために、ぜひご活用ください。