総出力10kW以上の産業用太陽光発電には、投資型太陽光発電と自家消費型太陽光発電とがあります。
ここでは、投資型太陽光発電について解説いたします。
投資型太陽光発電とは
投資型太陽光発電とは、投資を目的として、固定価格買取制度(FIT)を活用し、発電した電気を売電することで利益を得るビジネスです。
投資型太陽光発電をおこなうには、土地と太陽光発電の権利を一緒に購入する、所有する土地へ太陽光発電システムを設置する、自社ビルや工場へ太陽光発電システムを設置するなど、さまざまな方法があります。
自家消費型との違い
投資型太陽光発電と、自家消費型太陽光発電では、同じ産業用太陽光発電でも違いがいくつかあります。では、何が違うのでしょうか? 具体的に解説いたします。
全量売電・余剰売電を選択できる
太陽光発電で発電した電気を売電する方法は2種類あります。どちらもFITを通じて売電するのは同じです。
10kW以上の産業用太陽光発電の場合、全量売電か、余剰売電を選ぶことができます。どちらも20年間は、申請時の価格で売電できます。
全量売電
全量売電とは、文字通り、発電した電気すべてを売電することです。正確に言えば、電力会社の系統に送電された電気の量すべてです。そうでない場合は、実質余剰買取になります。売電した電気は全て利益になります。2024年現在の全量売電の売電単価は9.2円/kWh(売電期間:20年間)となっております。
余剰売電
余剰売電とは、発電した電気を、まず自分たちで消費します。企業であれば、工場やオフィスで消費することになるでしょう。それでも余ったときに売電できます。自分たちで電気を消費するので、電気代の削減額と、売電した額が実質的な利益となります。2023年現在の余剰売電の売電単価は10円/kWh(売電期間:20年間)となっております。
税制優遇が異なる
自家消費型太陽光発電の場合、中小企業経営強化税制による即時償却または税額控除を受けられます。(2025年まで延長)詳しくは税理士にご確認ください。
しかし、投資型太陽光発電で、全量売電をおこなう場合は、中小企業経営強化税制による税制優遇が一切受けられません。全量売電の場合は、電気業の用に供する設備になると考えられるからです。
余剰売電の場合は、中小企業経営強化税制の即時償却または税額控除(取得価額の10%※1)の税額控除を受けられます。
※1.資本金3,000万円以下、資本金3,000万円1億円以下の法人の場合は7%の税額控除
(この情報は、2020年4月現在の情報です。最新の税制優遇については、必ず各担当省庁のホームページをご確認ください。)
国からの補助金がない
投資型太陽光発電に対する補助金はありませんが、自家消費型
太陽光発電に対する補助金が発表される見込みです。(2024年2月現在)
※各都道府県、各市区町村の補助金については、該当する機関のホームページなどをご査収ください。
固定価格買取制度(FIT)による売電
固定価格買取制度(FIT)とは、再生可能エネルギーの普及を目的として、2018年7月4日に施行されました。
FITは、再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを約束する制度です。
産業用太陽光発電は、20年間は申請時に定められた単価で売電することができます。
売電単価(FIT単価)は、経済産業省内の調達価格等算定委員会によって決定されます。価格の基準となるのは、各設備機器や工事費など導入価格です。
買取の対象は、太陽光、風力(小型・洋上・大型)、水力、地熱、バイオマスです。

売電単価は年々下落
売電単価は、再エネの普及のため、導入しやすい設備機器の価格になるよう、また、再エネ賦課金による国民負担を軽くするため、年々は下がるように設定されています。
FITが開始した2012年7月時点での太陽光発電の売電単価は、10kW未満の住宅用で42円、10kW以上で40円でした。
2023年度の産業用は自家消費要件で10Kw以上50kW未満が10円、50kW以上250Kw未満が全量売電で9.2円となっており、250Kw以上は入札制度により価格を決定することになっています。(2024年2月現在)
改正FIT法の施行(2017年4月1日)
2017年4月1日には、改正FIT法施行されました。
改正された背景には、FIT施行後にでてきたさまざまな問題点が挙げられます。主な問題点を集約すると、以下の3点に集約されます。
- 再エネ賦課金の増加(国民負担が大きくなった)
- 売電する権利を持っているのにもかかわらず、未稼働な案件が多かった。
- 近隣住民とのトラブルが多数報告されるようになった。
これらの問題を解決し、より健全に太陽光発電を推進するため、改正FIT法が施行されたのです。
変更点①:認定制度の変更
変更点②:メンテナンス(O&M)義務化
変更点③:運転開始期限の導入
変更点④:旧認定取得者の扱い(みなし認定)
変更点⑤:売電価格の入札制の導入 2017年度以降の売電単価の決まり方
改正FIT法で大きな変更点は、上記の5点です。
改正前の認定制度は、設備認定の申請が必要でした。改正後には事業計画認定の申請が必要となり、「再生可能エネルギー発電事業計画書」を提出しなければなりません。
事業計画書は、経済産業省が定めた「事業計画策定ガイドライン)に沿って、提出者の住所や氏名、設備、所在地、合計出力などのほか、メンテナンスの計画なども提出します。
太陽光発電所の運用に関してルールを再度整備することで、発電所の運用責任をよりはっきりと認識してもらい、健全な運用ができるように改正されています。
投資型太陽光発電はメリットが低下中
産業用太陽光発電は、FIT単価の下落、国の推進もあり、現在は自家消費型が主流ですので、工場・オフィス等の電気を直接使用する施設へ太陽光発電を設置する場合は、投資用ではなく自家消費型太陽光発電の経済メリットが断然高いです。
投資回収期間についても、FITで売電するよりも自家消費型のほうが圧倒的に短いのが現状ですので、投資型太陽光発電のメリットは低下中です。投資商品として魅力は低くなりましたが、投資型もメリットがなくなったわけではありません。
売電期間・価格が保障されている
投資には、太陽光発電投資以外にもさまざまな商品があります。
その中でも、太陽光発電はリスクが低く、安定していると言えます。
例えば、アパートやマンション経営には空室リスクがあります。コインランドリー投資などもそうですが、お客を必要とした投資ビジネスの場合、お客が入らないと利益になりません。
太陽光発電投資の場合は、お客を必要としません。そして、事業認定を受ければ、国に売電期間・売電単価が保障されています。お客の入りを考慮せず、非常に安定した投資と言えます。また、自然災害のリスクに関しても自然災害保険に加入する事でリスクを未然に防ぐことが可能です。また、機器故障に関するリスクも10年~15年の機器保障がセットになっているケースが多いです。近年では、自然災害保険に売電保証という保険も付帯されている場合があります。詳しくは購入時に販売企業様にご確認ください。
システム価格の下落で利回りの高さを維持
太陽光発電の売電単価は、FIT開始時の予定通り、年々下がっています。
しかし、同じように太陽光発電システムの価格も下がっています。売電単価自体が、1kWあたりの平均システム価格は2011年の頃より1/3以下となっています。
結果、利回りの高さは下落前と変わらず、表面利回り10%前後です。

約9.8年で初期費用を回収できる
太陽光発電のシステム価格は大幅に下がっているため、条件などにもよりますが、約9.8年で初期投資費用を回収も可能です。

