産業用太陽光発電の費用

2024年には、国内電気料金が過去5年で最高水準となり、多くの企業が電力コストとエネルギーリスクの見直しを迫られています。

このような中、産業用太陽光発電への注目が高まっており、工場や物流倉庫、商業施設などの屋根や遊休地に太陽光パネルを設置して、電気代の削減や売電収益を得る企業が増加中です。

また、企業価値の向上や投資対象としての魅力から導入するケースもあります。

この記事では、産業用太陽光発電の基本的な仕組みや業種別のメリットと導入事例、設置に必要なもの、投資回収期間のシミュレーションなど、導入前に知っておくべき情報について詳しく解説します。

産業用太陽光発電とは?

産業用太陽光発電とは、主に企業が工場や倉庫、商業施設、オフィスビル、農地、遊休地などに設置する中規模〜大規模の太陽光発電システムを指します。

一般的に、10kW以上の出力規模のシステムが産業用太陽光発電と呼ばれ、個人住宅向けの家庭用太陽光発電と区別されます。

家庭用太陽光発電との違い

家庭用・産業用太陽光発電の違い

産業用太陽光発電と家庭用太陽光発電では、設置目的や規模、活用方法などに明確な違いがあります。

主な違いは次表の通りです。

産業用
太陽光発電
家庭用
太陽光発電
出力規模10kW以上の中規模~大規模一般的に10kW未満
設置場所 屋根設置:工場や倉庫、商業施設など
野立設置:遊休地など
戸建て住宅の屋根
設置目的 ・売電による収益
・事業用電力の自給自足
・環境配慮・企業イメージの向上、BCP対策など
電気代の節約や売電収入

特筆すべき特徴は設置目的です。

産業用は主に投資やビジネスの用途で導入されるケースが多く、売電による利益を得ることを主な目的としています。

とはいえ、自家消費目的で産業用太陽光発電を導入する方も少なくありません。

一方で、家庭用太陽光発電は電気代の節約や災害時の備えをするために導入され、電気を自家消費して、余った分だけ売るのが目的です。

個人でも購入可能?

産業用太陽光発電は、一定の条件を満たせば個人でも購入可能です。

実際に、個人事業主や副業として導入し、遊休地の有効活用や長期的な売電収入を目指すケースも増えています。

「節税できて不労所得も得られる」というメリットが注目されがちですが、実際には資金計画や中長期的な運用管理、法的対応が必要となります。

事業所得として扱われるため、確定申告が必須になる点にも注意が必要です。

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産業用太陽光発電を設置する主なメリット

産業用太陽光発電を設置する主なメリットは次の通りです。

  • 電気代を削減することができる
  • FIT制度やFIP制度によって売電収入が得られる
  • 災害時の非常電源として利用できる
  • 節税対策になる
  • 対外的なPR(脱炭素経営やESG経営など)になる

これらのメリットについて、1つずつ見ていきましょう。

電気代を削減できる

産業用太陽光発電を設置すると日中の事業用電力を自給自足できるようになり、電力会社からの購入電力量を大幅に削減できます。

特に電力使用量の多い工場や倉庫、商業施設では、年間の電気代を数十万~数百万円単位で節約できるケースもあります。

FIT制度やFIP制度によって売電収入が得られる

産業用太陽光発電で発電した電力のうち、自家消費せずに余った分は、FIT制度(固定価格買取制度)やFIP制度(市場連動型買取制度)を活用して電力会社に売電することができます。

FIT制度・FIP制度とは以下のような制度です。

FIT制度 ・国が一定期間、決まった価格で電力を買い取る制度
・安定した収益が見込める
FIP制度 ・電気を市場価格で売れば、プレミアム(補助学)を上乗せした金額をもらえ制度
・売電価格は市場次第で変動する

これにより、安定した収益源を得ることができ、初期投資の回収にも貢献します。

ただし、太陽光発電の売電価格は年々下がってきているため、得られる売電収入も減少しています。

売電価格の推移

施設や工場で昼間に大量の電気を使う場合や、電気デマンド契約などで電気料金が割高な場合、FIT制度が終了していて売電価格が安すぎる場合などは売電せずに自家消費した方がお得です。

しかし、「昼間に使って、余ったら売る」というスタイルで運用したい場合は、蓄電池を併用し使いきれない電気は売ることで収益を得ることができます。

FIP制度により売電価格が上昇する可能性も!

FIP制度とは、太陽光などで発電した再生可能エネルギーを市場価格で売電し、その価格に一定額の補助額を上乗せしてもらう仕組みです。

これは、従来のFIT制度のように決まった価格で20年間買い取ってもらえる制度とは違って、市場価格によって売電収入が変動するのが特徴です。

そのため、市場価格が上がれば売電価格が上昇する可能性はありますが、安定して高い売電価格が続くという保証はありません。

そのため、FIP制度は市場価格を見ながら、売電のタイミングや設備の運用をコントロールできる事業者に向いています。

災害時の非常電源として利用できる

産業用太陽光発電は、災害時の非常用電源として活用できます。

医療・福祉施設や物流拠点などの電力の安定供給が重要な現場では、照明・通信・冷蔵設備など最低限の電力を確保することが可能です。

さらに、蓄電池と組み合わせると夜間や天候不良時でも電力を確保できるため、災害時のBCP(事業継続)対策をすることができます。

節税対策になる

産業用太陽光発電は減価償却が可能で、初期投資を数年にわたって経費として計上できます。

さらに、完全自家消費型の産業用太陽光発電の場合は、中小企業経営強化税制の「即時償却制度」や「税額控除制度」を活用して初期投資を一括して経費処理できる可能性があります。

また、売電型の産業用太陽光発電を設置する場合に、売電売上の消費税よりも初期費用として支払った消費税の方が多い場合は、差額が還付される可能性があります。

対外的なPR(脱炭素経営やESG経営など)になる

CO₂排出削減や環境配慮型企業

産業用太陽光発電の導入は、脱炭素経営やESG経営の実践として社外にアピールできる有効な手段となります。

近年では、原材料の調達からサービスの供給までの流れ全体での環境への配慮が求められており、再生可能エネルギー活用が競争力の一部となっています。

つまり、産業用太陽光発電の導入は、CO₂排出削減や環境配慮型企業としての評価向上につながり、取引先・投資家・地域社会に対して好印象を与えることができるのです。

法人は脱炭素しないと大きな事業リスクが

脱炭素に取り組まない企業は、大手企業との取引停止や入札不利、資金調達の困難化など、さまざまなリスクを背負うことになります。

特に製造業や輸出産業では、サプライチェーン全体でのCO2削減が求められているため対応が急務です。

また、多くの金融機関・投資家は、具体的なCO2削減目標を掲げている企業に優先して融資や投資を優先する傾向を強めています。

【業種別】産業用太陽光発電を設置するメリット

産業用太陽光発電は、次のような業種で使われます。

産業用太陽光発電の業種
  • 製造業(工場・プラント)
  • 倉庫・物流センター
  • 商業施設・小売業
  • 農業・畜産業
  • 不動産業(商業施設・オフィスビル・遊休地)
  • ホテル・宿泊施設
  • 医療・福祉施設
  • 教育機関

以下では、それぞれの業種でのメリットや導入事例について1つずつ解説します。

製造業(工場・プラント)

加工機械や空調設備、照明などの電力負荷が大きい製造業では、発電した電力を効率的に自家消費できるため、電気代削減効果が高くなります。

また、CO₂排出量の削減やESG対応が求められる中で、再エネ活用による脱炭素経営のアピールにもつながります。

製造業にとって、太陽光発電の導入はコスト削減と企業価値向上の両面に効果的です。

工場・プラントの導入事例

ある金属加工メーカーは工場屋根に太陽光発電を導入し、工作機械・空調・照明などの電力使用量のうち約35%を太陽光発電で賄いました。

太陽光発電容量350kW
年間発電量420,000kWh
自家消費率70%
年間電気代削減額590万円(電力単価20円/kWh)
初期投資7,000万円(20万円/kW)
投資回収期間約12年→補助金活用で約7年に短縮

倉庫・物流センター

倉庫・物流センターは屋根が広く、太陽光発電の設置面積が広くなるため、昼間の電力消費を太陽光でまかなう効果が大きくなるのがメリットです。

また、昼間にフォークリフトや空調、照明などで大量の電気を使っている場合、太陽光でその電力をまかなえて節約効果が高くなります。

倉庫・物流センターの導入事例

大手物流企業は倉庫の屋根に太陽光発電を導入して、冷蔵庫・空調・照明などの電気代の30%をカバーしました。

太陽光発電容量500kW
年間発電量600,000kWh
自家消費率60%
年間電気代削減額900万円(電力単価25円/kWh)
初期投資8,000万円(16万円/kW)
投資回収期間約9年→補助金活用で約6年に短縮

商業施設・小売業

商業施設・小売業では、日中に冷暖房や照明に電力を多用しているため、太陽光発電の導入によるコスト削減が有効です。

照明・空調・冷蔵設備などを太陽光でまかなえば、電気代の固定費を大幅にカットできます。

また、環境配慮型店舗としてSDGs・脱炭素経営のPRにも期待できます。

蓄電池と組み合わせれば、停電時でも照明やレジなど最低限の電力を確保することが可能です。

商業施設の導入事例

大型ショッピングモールでは、建物の屋根に太陽光発電を設置して年間消費電力の20%を賄いました。

太陽光発電容量300kW
年間発電量360,000kWh
自家消費率80%
年間電気代削減額約580万円(電力単価20円/kWh)
初期投資4,500万円(15万円/kW)
投資回収期間約7.8年

農業・畜産業

農業や畜産業では、農地や牛舎・鶏舎などの屋根、未利用の土地を活用して太陽光発電を導入するケースが増えています。

ビニールハウス内の空調設備、給水、照明などに多くの電力を使う農業施設との相性は抜群です。

また、売電により安定した収入を得られるため、農閑期にも収入があるのが魅力。

たとえば、1kWあたりの年間発電量を1,000kWh、売電単価を11.5円/kWh(税抜)とすると、10kWの太陽光発電設備を設置した場合、年間11万5,000円前後の売電収益を得られます。

特に、電気代が高いエリアや大量の電気を使用する季節には節約効果が高くなります。

農業・畜産業の導入事例

ある農業法人では、作業場兼保管倉庫の屋根に太陽光発電を設置し、冷蔵庫・パッキング機器の電力の50%を太陽光発電でまかなうことで、年間の電気代を大幅に削減しました。

太陽光発電容量200kW(屋根設置)
年間発電量240,000kWh
自家消費率60%
年間電気代削減額約290万円(電力単価20円/kWh)
初期投資4,000万円(20万円/kW)
投資回収期間約14年→補助金・FIT活用で約6年に短縮

不動産業(商業施設・オフィスビル・遊休地)

不動産業では、所有資産である建物や土地を活用して収益を生み出すことが求められます。

商業施設やオフィスビルの屋根、未利用の遊休地に太陽光発電を導入して、何もなかったところをを収益源に変えることが可能です。

また、物件の共用部の電気代を自家消費でまかなうことができるため、オーナーにとっては維持費が削減できるのがメリットとなります。

不動産業の導入事例

ある不動産会社では、管理する大型ショッピングモールの屋根に太陽光発電を設置し、共用部の照明や空調に使う電力のうち約40%を太陽光発電でカバーすることができました。

また、施設の環境配慮をPRすることで、テナント企業のESG方針にも貢献しています。

太陽光発電容量約400kW
年間発電量480,000kWh
自家消費率65%
年間電気代削減額780万円(電力単価25円/kWh)
初期投資8,000万円(20万円/kW)
投資回収期間約10年→補助金活用で約7年に短縮

ホテル・宿泊施設

ホテルや宿泊施設は、24時間営業で電力使用量が多いため、太陽光発電を導入することによる電気代削減効果が大きいのが特徴です。

特に、照明・空調・給湯など日中の使用電力を太陽光発電でまかなうことができます。

また、「環境に優しいホテル」「災害時に強い宿泊施設」として旅行客にアピールすることも可能です。

ホテル・宿泊施設の導入事例

ある温泉旅館では、太陽光設備を設置したことで電力の70%を太陽光発電でまかなうことに成功しました。
客室・厨房・大浴場・EVなどの電力を太陽光発電で補っています。

太陽光発電容量300kW
年間発電量360,000kWh
自家消費率70%
年間電気代削減額450万円(電力単価18円/kWh)
初期投資6,000万円(20万円/kW)
投資回収期間約13年→補助金活用で約10年に短縮

医療・福祉施設

医療・福祉施設では、BCP対策の一環として非常用電源の確保が求められます。

一般的に、医療・福祉施設には非常用電源自家発電装置がありますが、稼働時間は最長で72時間程度と限られています。

そのため、災害時などで停電が長引くと医療の継続が困難になり、患者に危険が及ぶ可能性がありますが、太陽光と蓄電池があれば、災害・停電時も電力供給を継続することが可能です。

医療・福祉施設の導入事例

ある介護施設では、日中の電力の40%を太陽光発電で自給し、災害時には非常灯や冷蔵庫への給電を確保しています。

太陽光発電容量50kW
年間発電量60,000kWh
自家消費率70%
年間電気代削減額105万円(電力単価25円/kWh)
初期投資750万円(15万円/kW)
投資回収期間約7.1年

教育機関

学校や大学などの教育機関でも、環境教育の一環として太陽光発電を導入するケースが増えています。

授業・照明・冷暖房・PCなど、教育機関は昼間に多くの電気を使うため、自家消費型運用にすれば電気代を大きく削減することが可能です。

また、教育機関は「指定避難所」に指定されているケースが多くあります。

災害時に非常用電源として太陽光発電を活用できれば、停電時にも照明や通信機器を稼働させることができ、避難所としての機能を維持することが可能です。

実際に、岐阜県の真正中学校では、太陽光パネル15.36kWと蓄電池15kWhを導入し、避難所としての機能をより向上させています。

避難所施設として位置づけられている中学校へ、太陽光モジュール15.36kW 、蓄電池システム15kWhの導入
災害時に蓄電池からの電力で点灯可能なLED照明(スポットライト)の設置。
引用元:再生可能エネルギー 活用事例データベース「平成27年度 真正中学校太陽光発電設備導入事業

さらに、教育機関に太陽光発電を設置する際は補助金の対象になりやすいことが特徴です。

設備費用の一部負担や、補助付きで導入できることが多いため、太陽光発電設備を設置する際はぜひ活用しましょう。

教育機関の導入事例

生徒数400人の公立高校では、校舎の屋上に40kWの太陽光発電を設置し、理科教育の教材としても活用しています。
発電の仕組みを学ぶ場として活用できるのがメリットです。

太陽光発電容量40kW
年間発電量48,000kWh
自家消費率40%
年間電気代削減額48万円(電力単価25円/kWh)
初期投資600万円(15万円/kW)
投資回収期間約12.5年

産業用太陽光発電の設置方法は2種類

産業用太陽光発電野立設置と屋根設置

産業用太陽光発電の設置方法は主に以下の2つです。

  • 野立設置
  • 屋根設置

それぞれには、メリットとデメリットがあるので、土地や建物の状況、目的に応じて選ぶ必要があります。

以下では、それぞれのメリットとデメリットについて見ていきましょう。

野立設置

野立設置とは、使っていない土地や農地などの遊休地の地面の上に架台を設け太陽光発電を設置する方法です。

たとえば、山の斜面を切り崩して太陽光発電を設置するのは野立設置に分類されます。

野立設置は、特に売電収益を目的とした投資型に多く見られます。

主なメリットとデメリットは次の通りです。

メリットデメリット
・広大な面積を確保しやすく、大規模発電に向いている
・設計の自由度が高く、最適な方角・角度で設置できる
・農地転用や開発許可など、法規制対応が必要なケースが多い
・台風や動物被害対策、雑草対策など定期的な土地の管理が必要となる

野立設置は、適切な土地や運用計画がある場合は、安定した収益を得られる投資手段となります。

ただし、設置する前に、地域の規制や自然災害リスク、近隣住民の理解などを考慮することが大切です。

屋根設置

屋根設置とは、工場や倉庫、商業施設などの建物の屋根に太陽光発電を設置する方法です。

主なメリットとデメリットは次の通りです。

メリットデメリット
・遊休スペースを活かせるため、新たに土地取得が不要となる
・発電した電力をそのまま施設内で自家消費しやすい
・屋根の構造・耐荷重によっては設置が難しいケースもある
・パネルの配置に角度・方位の制約がある場合がある

既存の建物の屋根を活用するため、初期投資を抑えつつ自家消費が可能ですが、建物構造や耐荷重に注意が必要です。

産業用太陽光発電の設置に必要なもの

産業用太陽光発電を設置する際に必要なものは、設備と手続きに分けて考える必要があります。

必要な設備とその概要は、次表の通りです。

太陽光パネル 太陽電池をパネル状にした必須の設備
国内外メーカーからさまざまな性能・価格帯の商品が販売されている
パワーコンディショナ 太陽光パネルで作られた直流電力を、交流電力に変換する装置
システム全体の効率や耐久性が発電収益に大きく影響する
架台 太陽光パネルを屋根や地面に固定するための架台
屋根や地面など、設置場所の形状・方角・傾斜に合わせて設計される
接続設備・分電盤 接続設備:複数の太陽光パネルからの電気をまとめて利用施設の電気系統をつなぐ配線機器や安全装置
分電盤:利用施設内に電気を安全に分配する装置
モニタリングシステム発電状況や故障検知などを遠隔監視する
安全装置
(OVGR・RPR)
電力会社と系統連系する際に必要となる安全装置
電力計測器・電力量計電力会社と系統連系する際に必要

必要な手続きとその概要は、次の通りです。

設備認定申請FIT制度やFIP制度を利用するために必要な申請手続き
接続検討申込・接続契約 電力会社と系統連系するために必要
接続検討を申し込み、接続契約を締結する
許認可・届け出建築基準法、都市計画法、農地法、電気事業法に基づく許認可や届出が必要になる場合がある
環境関連手続き大規模設備の場合、環境影響評価や条例による届け出が必要となる地域もある
運転開始報告・送電開始申込 設備設置後に運転開始報告を提出する
電力会社に送電開始申込を行い実際の売電・運用を開始する

設備の設置や手続きには専門的な知識が必要です。

設置したい場所の面積や地盤の状況、日照時間や、手続きの方法などを専門業者に確認し進めていきましょう。

また、手続きは基本的に設置者が行いますが、実際は専門業者が代行して行うことが多いです。

できるだけ早い段階で専門業者に相談することで、太陽光発電の設置を円滑に進めることが可能になります。

産業用太陽光発電の設置にあたり考えるべき3つのコスト

産業用太陽光発電を設置すると、次の3つのコストが発生します。

  • 初期費用(機器本体・工事)
  • ランニングコスト
  • 税金(所得税・消費税・固定資産税)

ここからは、それぞれについて詳しく見ていきましょう。

初期費用(機器本体・工事)

産業用太陽光発電の初期費用には、次のようなものがあります。

機器購入費用太陽光パネル、パワーコンディショナ、架台など
工事費用設置工事費、電気工事費など
設計・申請代行費用設備設計費、電力会社や経産省への申請手続きなど

初期費用の相場は1kWあたり20~30万円程度ですが、補助金を活用して初期費用を抑えることもできます。

設置場所により費用が異なる

屋根設置の場合も野立設置の場合も1kWあたり約20〜30万円の費用がかかることは同じですが、「土地造成や整地が必要かどうか」「設備の大きさ・容量」などによりかかる費用が大きく異なります。

たとえば、オフィスビルの屋上に10kWの太陽光発電を設置する場合は、1kWあたり約25万かかるので、約250万円の初期費用が発生します。

一方で、使っていない土地に太陽光発電を設置する場合は、1kWあたり約25万~40万円かかるため、10kWの場合は​約250万円〜400万円です。

土地造成や地盤改良の作業が必要になれば、さらに多くの初期費用がかかることになります。

ランニングコスト

運用開始後も、定期的な維持・管理のためにコストがかかります。

主なランニングコストには次のようなものがあります。

定期点検・保守費用年1~2回の点検、安全確認など1~2万円/kW
モニタリングサービス発電状況の遠隔監視、エラー通知5,000円~2万円/年
除草・清掃敷地の草刈り、パネル洗浄など3~10万円/年
保険料自然災害、火災、盗難への備え年1,000~3,000円/kW
修理・交換費用パワコン故障、ケーブル劣化など内容により異なる

これらを適切に管理することで、長期間安定した発電と収益を維持することができます。

税金(所得税・消費税・固定資産税)

太陽光発電は資産なので、さまざまな税負担が発生します。

主な税金には次のようなものがあります。

所得税・法人税 売電収入や節約分は「事業所得」として課税対象になる
青色申告や減価償却で節税可能
消費税設備設置のために支払った消費税は、課税事業者選択届出をすれば還付可能
固定資産税固定資産に該当する場合は、資産評価額に応じて課税される

税制は毎年変更されることがあるため、必要に応じて税理士や専門業者に確認しましょう。

産業用太陽光発電の初期費用を抑えるには?

産業用太陽光発電は発電量が大きいため、設置するための初期費用が高額になります。

そのため、初期費用を少しでも安く抑えて導入することがリスクヘッジにつながります。

初期費用を抑える方法は以下の通りです。

  • 太陽光パネルの価格を下げる(海外メーカーの活用など)
  • 国や自治体の補助金を活用する
  • 複数業者からの見積もりを取り、比較する

ここからは、それぞれの方法について見ていきましょう。

太陽光パネルの価格を下げる(海外メーカーの活用など)

太陽光パネルは、国内メーカーと海外メーカーで価格差があります。

産業用太陽光発電では100枚以上の太陽光パネルを設置することもあるため、1枚の価格差は小さくてもトータルでは大きな差になります。

国内メーカーにこだわらず、品質がしっかりとした海外メーカーのものを利用すれば、1kW当たり数万円単位で費用を抑えることができます。

太陽光パネルの価格はどれぐらい下がる?

産業用太陽光パネルの価格は、メーカーや販売会社によって大きなバラつきがありますが、国内メーカーの太陽光パネルは1kWあたり約25万円以上のものが多いのに対し、海外メーカーは1kWあたり約20万円以下で販売されていることが多い傾向にあります。

10KWの太陽光発電を導入する場合は、国内メーカーが200万円〜250万円、海外メーカーは150万円〜200万円となり、その費用差は最大100万円程度です。

国内メーカーの場合は品質やサポートがしっかりしているケースが多いのですが、海外メーカーの場合は製品の品質や保証内容を確認することが大切です。

複数の販売会社から見積もりを取って比較検討して、適正な業者と契約するようにしましょう。

国や自治体の補助金を活用する

国や地方自治体では、再生可能エネルギーの普及を目的とした補助金制度を設けています。

条件に合致すれば、数百万円単位の補助金が受けられることがあるため、事前に確認しておくことが重要です。

近年の傾向として、太陽光発電のみや蓄電池のみの設置には補助金が適用されずセット設置が条件となっていることが多いようです。

また、地方自治体の補助金は、その自治体によって補助金額や支給条件が大きく異なる場合がありますので、事前に施工業者や専門家に確認するようにしましょう。

複数業者からの見積もりを取り、比較する

太陽光発電は同じ設備でも業者によって大きく価格が異なります。

見積もり金額があまりに安い業者の場合は、保険が含まれていなかったり、適切な材料が使われていなかったりでトラブルになり、結果的に高くついてしまうこともあるので注意が必要です。

太陽光発電は安い買い物ではないため、一括見積りを利用して複数業者から見積もりを取り比較検討することをおすすめします。

【シミュレーション】産業用太陽光発電の設置から何年で回収できる?

産業用太陽光発電を設置した場合の投資回収期間のシミュレーションを、次の2通りに分けて紹介します。

  • 自家消費メインの場合
  • 売電収入メインの場合

以下で、それぞれのケースについて順に見ていきましょう。

自家消費メインの場合

自家消費がメインの場合は、初期費用を年間の電気代削減額で割ることによって、投資回収の年数を求めることができます。

シミュレーションの前提条件を次の通りとします。

年間消費電力500,000kWh/年
購入電力単価20円/kWh(高圧契約)
年間自家消費電力200,000kWh/年
1kW当たりの年間発電量1,200kWh/kW
設備費用20万円/kW

購入電力単価が20円/kWhなので、年間の電気代削減額は400万円/年(=200,000kWh/年×20円/kWh)となります。

一方、設備容量は167kW (=200,000kWh÷1,200kWh)となり、初期費用は約3,340万円(=167kW×20万円/kW)となります。

よって、投資回収年数は約8.4年(=3,340万円÷400万円/年)となります。

補助金・助成金を活用するとさらに回収期間が短くなる!

この場合、500万円の補助金が支給されたとすると、初期費用は2,840万円(=3,340万円-500万円)となり、投資回収年数は約7.1年(=2,840万円÷400万円/年)に短縮できます。

蓄電池をセット設置して自家消費率をアップすればさらにお得に!

蓄電池とセットで設置することによって、夕刻以降の夜間でも太陽光発電の電気を利用できるため自家消費率がアップします。

その結果、電力購入量をより多く削減することができ、投資回収年数はさらに短くなります。

たとえば、蓄電池をセット設置して自家消費率を60%(=300,000kWh/年)にアップすると、年間の電気代削減額は600万円(=300,000kWh×20円/kWh)に増加し、投資回収年数は約4.7年(=2,840万円÷600万円/年)に短縮されます。

このように、太陽光発電だけを設置するよりは蓄電池をセットで設置した方がよりお得になります。

売電収入メインの場合

売電収入がメインの場合は、初期費用を年間の売電収入で割ることで、投資回収年数を求めることができます。

シミュレーションの前提条件は次の通りとします。

年間発電量60,000kWh/年
売電率100%
売電単価8.9円/kWh(2025年のFIT単価)
発電出力50kW(1,200kWh/1kWとして)
設備費用20万円/kW

年間の売電収入は、約53万円/年(=60,000kWh/年×100%×8.9円/kWh)となります。

初期費用は1,000万円(=50kW×20万円/kW)なので、投資回収年数は約18.9年(=1,000万円÷53万円/年)となります。

ただし、FITでは買取価格が8.9円/kWhに固定されるため、FIP制度を利用して市場価格が高騰する時間帯に売電することで、より高い収益が得られる可能性があり、投資回収年数も短くできます。

産業用太陽光発電を設置するなら、まずは複数業者からの見積もり取得がおすすめ!

この記事では、産業用太陽光発電の基本的な仕組み、家庭用との違い、業種別のメリットや導入事例、必要な設備・手続き・コスト、投資回収シミュレーション例について解説しました。

シミュレーション例からも分かるように、電気代の高騰やFIT価格の低下が進む中では、売電メインよりも自家消費メインの方が投資回収期間が短く、有利な選択となります。

ただし、設置場所や目的によって最適なシステム構成は大きく異なるため、1社だけでなく複数の業者から見積もりを取り、価格・実績・保証内容・アフターサポートなどをしっかり比較検討することが大切です。

まずは、信頼できる複数の業者から見積もりを取り、自社に最も適した導入プランを見つけるようにしましょう。