企業でも再生可能エネルギーへの注目や発電設備の導入が増えています。
なかでも太陽光発電は、電気料金の高騰や、発電設備の導入コストの低下、災害時の備えとして注目されています。会社の倉庫の屋根を利用して太陽光発電設備を導入することで、税制優遇のメリットに加え補助金を受けられるケースもあるのです。
この記事では、その背景や実際のメリットなどの詳細について解説します。
屋根置きの太陽光発電でFIT増額、2024年から
2024年度からは屋根に設置した事業用太陽光発電において、FIT価格とFIPの基準価格が増額するニュースが注目されています。
- 従来の地上型FIT価格よりも高い12円/kWh
- FITの区分に「10kW以上屋根置き区分」を新設
- 10kW以上で一律、容量による価格区分なし
- 50kW未満は地域活用要件あり
FITの区分が新設され、「10kW以上屋根置き区分」に該当する工場や倉庫の屋根に設置された太陽光発電のFIT価格買取価格が高くなります。
地上に設置された従来の太陽光発電所のFIT価格よりも2割〜3割ほど高く設定される見通しです。増額される屋根置き型のFIT買取価格は10kW以上で一律です。発電容量による区別はありません。
屋根に設置する太陽光発電は、土地の造成費用がかからないメリットがあります。
ただし、50kW未満の低圧事業用太陽光発電は自家消費型の地域活用要件の対象です。
地域活用要件に該当すると年間で3割以上の自家消費が求められるなど、FIT認定に条件がありますので太陽光発電を導入する前に施工会社とよく確認をしてください。
企業の太陽光発電の導入が増えている背景
近年、太陽光発電を導入する企業が増えているが、なぜ増えているのでしょうか。導入の背景について太陽光発電を利用する利点を踏まえながら解説します。
電気料金の高騰
産業用の電力需要はますます増加すると、電力広域的運営推進機関は予測しています。
原子力発電所の再稼働は極めて難しい状況で、安価な石炭火力発電も世界の脱炭素施策によって排除されていきます。再生可能エネルギーでも電力を充分に補うことは難しいため、需要が増加する部分の電力については石油や天然ガスなどの火力発電でまかなうことになるでしょう。
火力発電に使用される燃料は輸入コストの影響を受けますので、世界の燃料需要が高まれば電気料金に転嫁されることになります。
太陽光発電の導入コストの減少
かつては高額だった太陽光発電システムの導入コストが、年々下がってきています。化石燃料から再生可能エネルギーへの転換の流れを受けて、日本でも国を挙げて太陽光発電の普及が促進されているからです。
各国のメーカーの技術の向上なども低価格化が進んだ要因となっています。
2011年の太陽光発電システムの平均的な価格は1kWあたり52万円でしたが、その後の10年で半額以下の13万円程度まで下がっています。
再エネ電源を目指す企業の増加
再生可能エネルギーの主力電源化を目指す企業も増加し、「RE100」という環境プロジェクトに加盟する大企業が増えています。その影響は、仕入れ先である中小企業にも及んでいるのです。
今後、RE100に加盟している大企業が、再エネ電源を目指す会社を取引先として選択することが一般的になるでしょう。そのため、中小企業にとっては、太陽光発電の導入による再エネ電源化に力を入れることで取引のチャンスが拡がることになります。
災害時の備え
地球温暖化による気候変動などの要因から、各地で台風や地震などの自然災害が多発しています。それに伴って災害時に電力供給がストップする事態が増え、中には何日も電気が使えない生活を強いられるような状況も起きました。
企業でも不測の事態に備えて、停電への対策をとることが求められています。太陽光発電を導入することで、災害などの緊急時にも太陽光で得た電力が使えるのです。
BCP対策によるリスク対策
BCP(事業継続計画)は、災害や事故が発生した際の損害を最小限にしながら事業継続する方法を決めておくものです。BCP対策は、企業にとって単なる防災対策というよりは経営に影響するひとつの要因にもなります。
BCP対策を実施すると、顧客や社員を大切にしている企業という社会的なイメージアップにもつながります。また、BCP対策は通常業務のありかたも見直すきっかけとなるため、業務の効率化が進むのも大きなメリットです。
倉庫に太陽光発電を設置するメリット・デメリット
会社の倉庫に太陽光発電システムを導入するメリットとデメリットについて紹介します。
スペースを有効活用できるうえ遮熱効果がある
倉庫に太陽光発電を導入するメリットとして、倉庫の屋根のデッドスペース部分に太陽光発電システムを設置することで、スペースの有効活用ができます。その上、会社の再エネ電源化が可能になり、毎月のランニングコストである電気料金を引き下げることができます。
太陽光発電を屋根に設置することで遮熱効果が上がるため、倉庫内は「夏は涼しく、冬は暖かい」状態を保つことができます。そのため、電気の使用量を抑えることが可能です。
空きスペースを利用して、再エネ電源として電力を発電しながら遮熱効果によって電力使用も抑えることができるため「発電」と「節電」一石二鳥のメリットが得られるのです。
太陽光発電の設置には初期費用がかかる
倉庫に太陽光発電を設置するデメリットとして、初期費用がかかることが挙げられます。
前述したように、太陽光発電システムの本体価格は安くなっていますが、本体価格のほかに工事費など、まとまった費用がかかるのです。太陽光パネルの重量によって、建物に負荷がかかるため、耐えられる倉庫でなければ設置することができません。
ただし、次項で説明する税金面の優遇措置や補助金もありますので、デメリットである初期費用は下げることが可能です。
建物の築年数によっては導入できない場合がある
太陽光発電を倉庫の屋根に設置する場合、建物の築年数によっては設置できないこともあります。新しい耐震基準が制定された1981年6月1日以降に建築認定申請していることが必要です。
また、設置予定の建物の屋根が太陽光パネルの重さに耐えられるのかを算出してから導入することになります。それには、実績があり信頼できる専門業者に相談することが大切です。
太陽光発電で得られる優遇措置
太陽光発電の設置で利用できる税制優遇や補助金について解説します。
税制優遇で固定資産税
再生可能エネルギー発電の導入に関する税制優遇について解説します。
再生可能エネルギー発電設備に係る課税標準の特例措置
固定資産税が発生する年度から3年度分が3分の2に軽減されます。
対象の税金 | 償却資産税対象標準額 |
---|---|
軽減率 | 2/3に軽減 |
期間 | 3年 |
中小企業等経営強化法に基づく税制措置(固定資産税の特例)
先端設備等導⼊計画の認定を受けた中⼩企業者が⼀定の要件を満たした場合に固定資産税の特例を受けられます。
対象の税金 | 固定資産税 |
---|---|
軽減率 | 1/2に軽減 ※ 自家消費が対象 |
期間 | 3年 |
中小企業等経営強化法に基づく税制措置
法人税の即時償却または取得価額の1割の税額控除のどちらかが選べます。
対象の税金 | 法人税 |
---|---|
軽減率 | 全額即時償却、あるいは税額控除 ※ 原則、自家消費が対象(余剰売電も可能なケースがある) |
期間 | 3年 |
生産性向上特別措置法案に基づく特例措置
自治体の認定を受けた中小企業の設備投資に対して固定資産税の特例を受けられます。
対象の税金 | 固定資産税 |
---|---|
軽減率 | 0~1/2に軽減 |
期間 | 3年 |
補助金でかかる経費の半分をカバーできる
いわゆる化石燃料を使用した発電方法から、持続可能な再生可能エネルギーへの転換は、世界的な課題となっています。もちろん日本でも国を挙げて推進しており、なかでも太陽光発電に関しては、国からと、地方自治体からの補助金があります。
国からの補助金もありますが、自家消費用の太陽光発電が対象です。地方自治体からの補助金は地域によって異なりますが、こちらも自家消費用が対象です。
発電したすべての電力を売る投資用太陽光発電に補助金はほぼ出ていません。正直、電気料金が高くなっている現在は売電するメリット以上に自家消費するメリットが大幅に高いのが現状です。
物流倉庫・冷凍倉庫で自家消費用太陽光発電が活用できる
物流倉庫や冷凍倉庫は、冷却などの温度管理に多くの電気料金がかかる設備です。電気料金が年々上がっている昨今では、自家消費用の太陽光発電設備を設置して活用する動きが高まっています。
世界的にもSDGs(持続可能な開発目標)やRE100など脱炭素・再エネ化が推進されています。企業が施設を有効利用して自家消費用太陽光発電を設置し、再生可能エネルギーを自家消費することは達成しておきたい目標ではないでしょうか。
太陽光発電は固定買取制度から自家消費型へと移りつつあり、同時に企業にとっては環境対策を行っているというイメージアップにもつながります。
太陽光発電を設置するための初期投資は必要ですが、再生可能エネルギーを推進するための補助金制度を使えば抑えることも可能です。優遇税制によって固定資産税を抑えられるというメリットも見逃せません。初期費用はかかっても、補助金や優遇税制により回収期間はより短くなるでしょう。
また、倉庫の屋根にソーラーパネルを載せることで得られる遮熱効果も大きなメリットです。何もない屋根であれば経年劣化によるメンテナンス費用が必要ですが、パネル設置後は雨などが直接屋根にかからないため耐久性も上がります。
物流倉庫や冷凍倉庫に自家消費用太陽光発電設備を導入し活用すれば、多くのメリットが得られます。
太陽光発電を自宅に設置するメリット・デメリットについてはこちら!
物流倉庫・冷凍倉庫で太陽光発電を導入した事例
横浜冷凍株式会社(ヨコレイ)は、2006年伊勢原物流センターに初めて太陽光発電システムを導入しました。その後は海外に2カ所、国内に16カ所の物流センターの屋根に太陽光パネルを設置しCO2削減を実現しています。
2014年には、夢洲物流センターに業界最大級の太陽光パネルも設置され、ヨコレイグループ全体の2020年9月における実績は、年間発電量が約346万kWh、CO2削減量は1,810tに達しています。
日本物流センター株式会社では、物流業界の温室効果ガス削減を目指すために車種の変更や輸送ルートの見直しなどの工夫を行ってきました。物流倉庫の屋根には自家消費用太陽光発電を設置してCO2削減を実現しています。
東京事業所と関西事業所の倉庫の屋根に合計約6,200枚の太陽光パネルが設置されたことにより、2つの事業所の年間発電量は約144万kWh、CO2排出量の削減効果は一般家庭400世帯分に相当する年間666tとなりました。
脱炭素のメリット
温室効果ガスは地球温暖化の主な原因と指摘されてています。2015年にはパリ協定が採択されて、地球温暖化への国際的な取り組みが始まりました。温室効果ガスのなかでもCO2(二酸化炭素)は大きな割合を占めているため、排出量をゼロにしようという動きが世界中で高まっているのです。
脱炭素への課題意識は世界中に広がり、もはや取り組んでいるのは大企業だけではません。すべての企業が脱炭素への取り組みを検討する時代になっています。
企業が脱炭素に向けた取り組みを行っている場合、地球環境に配慮している企業という良いイメージが生まれるメリットもあります。太陽光発電で得た再生可能エネルギーを自家消費して活用すると、企業の電気料金が削減される点も大きなメリットです。
脱炭素のためにはある程度の設備投資も必要ですが、それを上回るメリットが得られる点に注目して早めに行動を起こしましょう。
脱炭素のメリットについての詳細はこちら:
サプライチェーン全体でCO2削減を目指す企業の増加
中小企業から排出される温室効果ガスは、国全体の1~2割を占めています。そのため、近年では、企業単独でなくサプライチェーン全体に目を向けてCO2削減を目指す企業が増えてきました。
国外の取引先や金融機関などからもCO2削減を求められるなか、企業の取り組みが注目されています。
CO2削減を目指して建物の屋根に太陽光発電を設置する際には、信頼できる専門業者を選ぶようにしましょう。1社だけで決めるのではなく、タイナビNEXTの無料見積りで複数の見積りを比較するのがおすすめです。
倉庫用の太陽光発電は一括見積りで初期費用対策
太陽光発電を導入している企業も増えており、倉庫の屋根に設置するとスペースの有効活用になるメリットがあります。
- 2024年からは屋根型10kW以上のFIT・FIPが増額
- 50kW未満は地域活用要件の対象
- 屋根型太陽光発電は造成費用がかからないので有利
- 倉庫の屋根で広く設置するとパネル設置コストを抑えられる
- 設備・設置費用は施工店により異なる
また、太陽光発電をつけると税制優遇を使うことができます。さらに、発電システムの設置に使える補助金も利用できます。
ただし、同じシステム構成でも設置する事業者によりかかる費用は異なります。
同じ性能をもつ発電システムなら、なるべく安く、適正な価格で設置できる事業者を選ぶのがコストを回収するコツです。
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