太陽光発電を自宅に設置する際、悩むのが住宅用と産業用どちらにするかです。屋根が大きい住居ですと、一般家屋でも産業用規模の太陽光発電を導入可能だからです。
住宅用と産業用の違いや収益性、そして自宅の屋根に適しているのはどちらか?
この記事では最新の太陽光発電事情を踏まえて、あなたに適した太陽光発電の形式をお応えます。太陽光発電で失敗したくない方は、ぜひ最後まで見てください。
住宅用・産業用の違いとは?
太陽光発電の区分に住宅用・産業用とありますが、これを分けるのは屋根に乗せる発電設備の出力容量です。太陽光発電システムの容量(出力)が10kW未満なら住宅用、10kW以上なら産業用となります。
一般住宅でも10kW以上の太陽光発電を設置すれば、その発電システムは産業用と区分されます。
出力容量(kW)とは?
太陽光発電の設備がどれだけ発電できるかを表す数値です。太陽光発電の制度においては重要な指標です。単位はkW(キロワット)で、システム容量や設備容量とも呼ばれています。
出力容量を算出する際は、ソーラーパネル1枚あたりの出力量の合計と、パワーコンディショナーの容量の合計を比較して、低いほうの数値を採用します。
産業用太陽光発電の特徴
発電容量が10kWを超える「産業用太陽光発電」は、余剰売電と全量売電が選べることが最大の特徴です。実際に使用するのが個人でも、事業者でも問題ありません。
ただし、発電容量ごとに売電やFIT価格の決定ルールが異なります。
- 10kW以上50kW未満の太陽光発電で余剰売電→「地域活用要件」を満たすことが条件
- 10kW以上50kW未満の太陽光発電で全量売電→FITで決められた価格が適用
- 250kW以上の太陽光発電で全量売電→入札制度で売電価格を決める
10kW〜50kW未満が対象の「地域活用要件」とは
「地域活用要件」は、日本における再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)に関連する要件の一つです。特に、10kWから50kW未満の中規模太陽光発電システムに適用されます。
太陽光発電の地域活用要件は、自家消費率が3割以上で、自立運転機能があることが条件です。
屋根に載せる太陽光発電はFIT価格が有利になる!
2024年からは10kW以上の太陽光発電で「屋根設置」区分が創設され、FIT価格が上乗せされるようになります。
2024年度 屋根設置 FIT価格 | 12円/kWh |
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2023年度 10kW以上50kW未満 | 10円/kWh |
2023年度 50kW以上250kW未満 | 9.5円/kWh |
2024年は屋根型の太陽光発電はすでに、とても有利な売電価格であることが示されています。設置費用は一括見積りを活用し、よりお得になるようにご検討ください。
容量別の設置場所・必要面積・かかる費用の目安
太陽光発電は容量別に設置場所や必要なスペース、費用は異なります。例えば、10kW以上であれば100㎡以上の面積、費用は250万円程度です。
屋根が広い家やカーポートも使える家ならこの区分も十分検討の余地があるでしょう。
買取制度も大きな違いがある
太陽光発電は、発電した電気を買い取ってもらえるFIT(固定価格買取制度)があります。売電の仕方は2つあり、発電した電気を全て売ることができる「全量買取」と、自家消費を優先し、余った電気を売る「余剰買取」です。
以前は10kWを超えれば「全量売電」も選択肢に入りましたが、これから50kW未満でFITを使うなら、「余剰売電」が適用されます。
余剰買取制度とは?
余剰買取制度の特徴として、発電した電気を全て売電できません。ご家庭で電気を自家消費し、余った電力を売電するという流れになります。
「全て売電できないなら導入する意味があるのか?」と疑問をお持ちかもしれません。電気料金の高騰と太陽光発電の導入費用の低下から、余剰買取でも十分な収益となります。
最近では、自家消費+売電というスタイルの方が設置費用の元を取りやすく、個人が太陽光発電を始めやすい状態になっています。
全量買取制度が使えない理由は?
全量売電をお望みなら、50kWの出力が必要になります。この規模の太陽光発電を設置するには、500㎡以上(150坪以上)のスペースが必要です。屋根とカーポートを使っても、これほどの面積を確保するのは難しいでしょう。
家屋や事業所に太陽光発電を設置する方は、余剰買取制度を使うことを前提に、収支をシミュレーションしてください。
余剰買取制度は住宅用と産業用で異なる
全量買取制度の対象範囲が狭まったのは残念ですが、太陽光発電には余剰買取制度というもう1つの買取制度が存在します。
住宅用・産業用のどちらをご自宅に設置する方でも抑えておきたい制度ですので、この機会に余剰買取制度の理解を深めましょう。
2024年の売電単価
- 住宅用(10kW未満)の売電単価(kWh)は16円(税込)
- 産業用(10kW以上50kW未満)の売電単価(kWh)は10円(税抜)
- 50kW以上250kW未満:9.2円(税抜)
- それ以上:入札制
住宅用の方が売電単価が8円も高く、一見すると住宅用の方が稼げると思いがちです。しかし注意したいのが後述する投資期間です。
また、細かな違いですが、住宅用と産業用で消費税の扱いが異なります。こちらは税金面の項目でお話します。
FITが使える期間の違い
- 住宅用(10kW未満)の買取期間は10年間
- 産業用(10kW以上50kW未満)の買取期間は20年間
太陽光発電投資には固定価格制度というものがあり、上記に記載されている電気の買取価格が長期間一律で固定されます。買取期間が長ければ長いほど有利です。
費用面の違い
産業用の方が規模やkW数が大きくなるため、必然的に導入費用もその分高くなります。
ただ、出力容量が大きいほど、1kWあたりの機材や工事費用が安くなるとされているため、トータルでの費用対効果では産業用の方が優れています。
税金の扱い方、手続きの違い
ここまでメリットの高い産業用ですが、税金面に関しては出力容量の低い住宅用が簡易です。
出力容量が増えるほど売電収入も高額になりますので、産業用太陽光発電は確定申告と、消費税の納付義務の可能性がでてきます。
太陽光発電の確定申告について
サラリーマンのような会社から給与をもらっている方ですと、給与所得以外に20万円の所得が発生すれば確定申告が必須です。
ただ、太陽光発電の場合、設備投資などが経費として計上できます。経費が増えれば、税金が課せられ所得分が減るため、課税金額を抑えて節税に繋がります。
家庭用と産業用でソーラーパネルの選び方はどう違う?
産業用太陽光発電には大きいスペースが使えるため、一般的には安い海外製をたくさん使うケースが多くみられます。
一方で、家庭用太陽光発電では、狭い屋根に小さくても発電効率がいいメーカーを使う傾向があります。
いずれにしても太陽光発電の保証はしっかりしているため、トータルの発電量や価格で選ぶとよいでしょう。
どのメーカーにすればよいのか迷う方は、タイナビNEXTの無料見積りがおすすめです。メーカーに縛られずに提案できる太陽光発電の施工店の見積りができ、複数社の比較が簡単にできます。
【産業用で人気の太陽光発電メーカー】
第1位:ロンジソーラー
ロンジは高い技術力と耐久性を誇り、ドイツの審査でもその高さが証明されています。コストパフォーマンスの高さで根強い人気です。
第2位:ジンコソーラー
自社製造による高品質・低価格が人気。影の影響を受けにくいパネルです。
第3位:トリナ・ソーラー
約200項目の社内検査をクリアしたパネルを扱う信頼性の高いメーカーで、製品の種類も豊富です。
太陽光発電の売電収入は消費税でお得に?!
住宅用と産業用のFIT価格を比較したとき、税込みと税抜きが混じっていることにお気づきでしたか? 住宅用太陽光発電の売電単価は税込みで、産業用は税抜きなのです。
この違いは、売電収入を考えるときにとても重要です。なぜなら、この売電収入にかかる消費税はあなたの収入になるからです!
それなら住宅用と同じように、最初から税込み表記にしておけば話は簡単だとお思いかもしれません。産業用の太陽光発電の中には大規模なメガソーラーもありますが、そうした大規模な発電設備を持つかたには、消費税の納付義務があるからです。
つまり、太陽光発電で電力会社から振り込まれた消費税を、国に納める投資家の人も居るということです。課税売上高が1,000万円を超えると消費税の納付義務が生じますが、住宅やちょっとした空き地での太陽光発電なら、この基準に届くことはないでしょう。
20年間、消費税と売電収入をもらえることを前提に、太陽光発電の発電容量を決めてくださいね。
住宅用と産業用~それぞれのメリット
売電価格が高い住宅用と、売電単価の買取期間が長い産業用。投資商材として有利なのは産業用でしょう。
産業用のメリット
設置する発電設備の容量が大きいほど、年間発電量・売電量を増やせます。少しずつ自家消費しても、売電に回せる余裕が生まれます。
産業用のFIT売電期間は20年間、住宅用の2倍です。単価が低くても、トータルで見ると産業用の方が収益性に優れています。
住宅用のメリット
まずは、固定資産税の対象にならないことです。そして、買取単価が高く設定されているため、産業用よりも短いスパンで導入費用を回収して黒字化できます。
余剰売電は稼げるのか?
住宅用・産業用の違いを比較してきましたが、そもそも余剰買取制度では旨味がないのでは? とお思いかもしれません。しかし、今の時代では余剰買取がフィットしています。
自宅の太陽光発電は、稼ぐよりも節約することに重点をおくことでメリットが最も大きくなります。
産業用と家庭用太陽光発電に補助金が出ている
太陽光発電には、産業用と家庭用どちらにも補助金が出ています。導入の際は、活用して初期費用を抑えましょう。
【国の補助金の例:産業用】
名称 | 需要家主導による太陽光発電導入促進補助金 |
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補助額 | 自治体連携型は3分の2以内 その他は2分の1以内 |
公式ページ | 経済産業省 資源エネルギー庁 |
【都道府県の補助金の例:産業用】
東京都 | 再エネ設備の新規導入につながる電力調達構築事業 |
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補助額 | 再エネ発電設備は助成対象経費の2分の1以内 (助成上限額:2億円) 蓄電池は助成対象経費の3分の2以内 (助成上限額:1億円) |
補助金を申請する方法と手続きに困ったときは
補助金の使い方や申し込み方法、適用条件などは補助金ごとに異なります。手違いがあって交付されない場合、初期費用に組み入れることができません。
ただし、面倒な手続きを施工店に代行してもらえば安心です。
お住まいの地域の情報に詳しい施工店は、タイナビNEXTからご紹介できます。
自家消費が圧倒的にお得
発電した電気を自家消費し、電力会社に買い取ってもらう余剰買取制度。実は単純に売電するよりも、自家消費した方がお得です。
その秘密は売電価格と電気料金の金額差にあります。
- 住宅用余剰買取価格(令和6年度):16円/kWh
- 東京電力の電気料金:19.88円~30.57円/kWh
(東京電力はスタンダードSプランを想定)
一見すると電力会社から電力を買ったほうがお得に見えますが、以下のように東京電力の電気料金は三段階制になっており、電気を使った分だけ単価が上がる仕組みです。
太陽光発電を設置する方ですと、一人暮らしというよりは複数人の世帯が大半でしょう。そうなると自然と電気料金も三段階目に突入し、高額なものになっているはずです。
最初の一段目は売電単価の方がわずかに高いですが、2段階以降は電気料金の方が高く、三段階目では9円もの差があります。
そのため太陽光発電を設置できるような住居をお持ちの方は、下手に全て売電するよりは、まずは自家消費に回す方が有益というわけです。
さらにオール電化の家庭ですと、太陽光発電を設置することで電気料金を効果的に削減できます。
昼間は日光が降り注ぐため太陽光パネルで自家消費。発電できない夜間はオール電化のプラン設定でお得に電気が使えるというわけです。
電気代が年々上昇している今は自家消費がお得
売電単価に比べると、電気代の単価が予想以上に高く、驚いたかもしれません。しかし電気代はみなさんごぞんじの通り、東日本大震災以降年々値上がりしています。
電気代が値上がりする度に、自家消費がお得になります。電気料金と違って売電単価は10年ないし20年間保証されるからです。
このように、太陽光発電を導入する際は、時代の流れを考慮する必要があります。
電気料金の値上げ、太陽光発電の初期費用が下落している点を考慮すると、自家消費で家庭の電気代を削減。余った分を売電する余剰買取スタイルで、電気料金の削減と売電収入の獲得を両立できる、今がチャンスです!
10kW未満住宅用太陽光発電の方は発電量の目安もご確認ください。
広い屋根をお持ちの場合、収益性を考慮するとやはり10kW以上の産業用太陽光発電システムが適しています。太陽光発電を検討している方は一度、産業用の太陽光発電の見積もりをとってみてください。
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