自家消費の取り組み実例

電気代が高騰しており、電力消費量の多い企業では、電気料金の削減を目指すケースも少なくない。自家消費型太陽光発電の導入・運用は、企業が実践できる取り組みのひとつだ。

今回は、自家消費型太陽光発電が企業に注目される理由、太陽光発電が向いている企業の特徴や導入のポイント、導入事例などを紹介しよう。

太陽光発電の自家消費が注目される理由

自家消費型太陽光発電に注目が集まっているのは、電気料金の値上がりに加えて、FIT制度における売電価格の低下が要因だ。

太陽光発電の利点は、電力会社から買うときの電力価格(買電価格)と、売電価格の差によって変化する。

電力会社から買う価格より、売電価格のほうが高額であれば、太陽光の電力は「自家消費せずに売る」ほうが得である。太陽光の売電価格のほうが安い、あるいは同額なら、電力を「売らずに自家消費する」ほうが得だ。

2019年の太陽光発電は、売電価格の大幅下落により「自家消費が優位」である方向へ傾いた。産業用電気料金と産業用太陽光発電のFIT買取価格を比較してみよう。

【FIT制度における10kW以上の太陽光発電 買取価格の推移】

2012年度40円
2013年度36円
2014年度32円
2015年度27円
2016年度24円
2017年度21円
2018年度18円
2019年度14円
2023年度11円

産業用電気料金は、原発の稼働停止と燃料費が値上がりに大きく影響する。2011年の震災で国内原発は全て停止され、火力発電の比重を増やした。

燃料費が上昇傾向に、対テロ施設の設置義務により九州電力・関西電力・四国電力の原発が停止を迫られる可能性が出てきた。電気料金のさらなる高騰リスクを目の前にして、電力の自家発電がもつ経済的メリットはますます大きなものになっていく。

太陽光発電の自家消費が活きる事業形態

太陽光発電自家消費事業形態

電気料金の削減を実現するため、自家消費型太陽光発電が活きる事業形態のポイントを紹介する。

太陽光発電のパネルを設置できる土地や屋上を敷地内に持っている

太陽光発電は、太陽光パネルの枚数が多いほど発電量が多くなる。まずは、広い屋上や土地などを有していることがポイントだ。隣接するため池なども、水上ソーラーで活用できる。

導入できるシステムの規模と面積は、以下の計算式で算出できる。

たとえば、設置面積(平方メートル)がわかっているなら、「設置容量(kW)=設置面積÷10」の計算式を使う。100平方メートルの土地や屋根面積の場合、100÷10で10kWのシステムが設置可能だ。

設置容量(kW)が決まっている場合は、「必要な面積=設置面積×10」の計算式を使う。200kWの太陽光発電システムを設置するなら、200×10で2000平方メートルの土地が必要だとわかる。

日中に多くの電力消費を行っている

太陽光発電は日中に発電する。昼間の電力使用量が多い企業なら、自家消費型太陽光発電で昼間の電力を概ね補えるだろう。

電気会社のプランでは、昼間の料金が高いケースがある。そのため、太陽光発電を導入すれば、自家消費によって高額なコストも削減可能だ。

休業日が少なく稼働時間の長い事業なら、太陽光発電の電力を無駄にせず、効率良く使用できるだろう。

月々に使用する電気料金が高額である

昼夜問わず電力消費の多い事業は、太陽光発電が向いている。たとえば、大型冷蔵庫や冷凍庫を24時間稼働させていると、電気機器の稼働時間は長くなる。きめ細かな温度管理が必要になるケースもあるだろう。

こういった事業では、昼夜の消費電力が多くなり、毎月の電気料金も高くなりがちだ。昼間の電力を太陽光発電で自家消費すれば、電気料金の削減が期待できる。蓄電池を併用すれば自家発電した電力も無駄にならず、大幅な経費削減が見込めるだろう。

環境経営に対する意識が高い

環境意識の高い企業にとって、太陽光発電は大きなメリットになる。RE100は、再生可能エネルギー100%で事業運営を行うことを目標とした、国際的な取り組みのことだ。国内外問わず多くの企業がRE100に参加している。自家消費による環境経営は、企業価値の評価向上に大きな影響を与えるだろう。

自家消費型太陽光発電を導入した国内外企業の事例

自家消費国内外企業事例

自家消費型太陽光発電を導入した企業の実例を紹介する。システム導入を検討する際の参考にしてほしい。

IKEA

大都市の郊外に店舗を持つIKEAは、家具や日常品などを販売する家具量販店だ。日本も含めて全世界の355カ所に店舗を展開し、RE100にも参加している。2020年までに、店舗とオフィスの使用電力を100%自然エネルギーに転換する方針だ。

世界に点在する自社建物に、太陽光パネル75万枚(2017年時点)を設置。同時に地中熱による空調システムの導入も行う。

2017年10月開業の「IKEA永久手」には、国内のIKEAでも最大規模の太陽光発電設備(出力1300kW)が備わっており、店舗への電力供給に貢献している。

自然エネルギーの比率は2017年時点で73%になっており、十分、目標達成が見込める。

ウォルマート

世界最大の小売業者であるウォルマートは環境意識が高く、RE100にも加盟している。2020年までに、年間10億ドル(約1000億円)のコスト削減と、100%の電力自給率を目標に掲げた。

2014年時点で、約250カ所もの店舗および物流センターに、太陽光発電を設置している。2020年までにはアメリカとプエルトリコを対象に、500カ所まで拡大する予定だ。

メトロキャッシュアンドキャリージャパン株式会社

ドイツに本社を構えるメトログループは、ヨーロッパでも有数規模の流通企業だ。日本法人のメトロキャッシュアンドキャリージャパン株式会社は、飲食業や食品小売業、給食業などの事業者を対象に、登録制卸売を行う。

広い敷地の大型店舗をもち、屋上には太陽光発電を、敷地内に関連設備を設置した。メトロは生鮮食品も扱うため、日中の営業時間が長く、休業日が少ない。そのため、太陽光発電の電力を有効活用できる。目標は、電力料金の2割削減だ。

キューピー株式会社

キューピー株式会社も非常に環境意識の高い企業だ。太陽光発電による再生可能エネルギーの使用に取り組んでいる。

2013年にキユーソー流通システム(KRS)、松戸営業所、伊丹第三営業所に太陽光発電を設置。その後も導入を進めた結果、8設備で年間約2500MWh(メガワット時)の発電を実現した。

2016年に、倉庫棟の屋上を活用した太陽光発電システムと、「グリーンファクトリーセンター」の設備を導入。太陽光発電による年間発電量は、合計約4500MWhになる見込みだ。これは、キューピーグループ生産部門の電力消費のうち、およそ2%をまかなえる数値である。

キューピー株式会社はCO2排出削減にも積極的だ。製造工程の効率を改善し、省エネ設備を導入。燃料を重油から天然ガスへと変え、原料資材メーカーや物流会社との連携も最適化した。

事業活動全体の効率化を図るとともに、原料調達、商品使用、廃棄に至るまで、サプライチェーンをも巻き込んだCO2排出削減に取り組んでいる。

太陽光発電は売電するより自家消費する時代へ!事例を参考に取り入れよう

FIT制度の売電価格の低下や、電気料金の値上がりによって、多くの企業が太陽光発電の自家消費に注目している。再生可能エネルギーは自社の経費削減をはじめ、企業価値の向上、サプライヤーである中小企業のビジネスチャンスの増加など、多くのメリットをもたらすだろう。

自家消費型太陽光発電を活用している企業の事例を参考に、システムの導入を検討してみてはどうだろうか。