自家消費型太陽光発電

企業が導入する大規模な太陽光発電といえば、固定価格買取制度による売電というイメージが強いのではないだろうか。しかし、太陽光発電の活用方法は売電だけではない。近年は発電した電気の自家消費に注目が集まっている。

余剰電力買取制度から売電目的で導入が広がった太陽光発電。なぜ、太陽光発電の導入を考える企業が増えたのか。

今回は、自家消費型太陽光発電が注目されるようになった背景と、設置企業が得られるメリットについて説明しよう。

自家消費型太陽光とは? 余剰売電・全量売電との違い

余剰売電・全量売電との違い

太陽光発電で発電した電気は、固定価格買取制度を用いた余剰売電と全量売電、そして自家消費という3つの使いみちがある。ここでは、それぞれの特徴を振り返ろう。

太陽光発電の全量売電では、発電したすべての電力を売る

全量売電では、自家発電した電力はすべて売ることができる。売電収入で儲けることを目的とするスタイルだ。

発電した電力をすべて売るため、使用電力量によって売電収入が左右されることはない。電力消費量の多い月も、売電収入が安定しやすいのがメリットだ。

売電単価は固定価格買取制度によって定められ、20年間維持される。単価が一定なのは収支の見通しが立ちやすいメリットであったが、近年は売電価格の下落が大きなネックとなっている。

太陽光発電の余剰売電では、自家消費して余った電力を売る

余剰売電とは、発電した電力を自家消費した上で、使いきれない電力を売電することである。10kW以上の太陽光発電はもちろん、10kW未満の太陽光発電でも適用できる。

余剰売電の主な目的は、太陽光発電で作った電気を自家消費することだ。太陽光発電で自家消費すれば、電気会社から購入する電気を減らし、月々の電気料金を安くできる。

電力コストの削減額だけでなく、余剰売電による収入で初期コストを回収しやすいスタイルなのだ。

クリーンな電力を使うことで、補助金や節税の対象設備に含まれることも多い。

全量自家消費型太陽光発電は、発電した電気をすべて使う

全量自家消費型太陽光発電とは、発電した電力のすべてを自家消費することだ。10kW未満と10kW以上、どちらの太陽光発電でも選択できる。

全量自家消費型太陽光発電の主な目的は、太陽光発電で作った電力の使用によって家庭や事業でかかる電気代を節約することである。

太陽光発電のコストが下がった今、家庭や事業で使用する電気は、電力会社から購入するより自家消費するほうが安くなる可能性が高い。太陽光発電を安く運用するほど、電力コスト削減効果は大きくなるだろう。

そして、固定価格買取制度の適用設備を対象外にする補助金や節税制度も、全量自家消費型であれば使うことができる。導入コスト低減に役立てるだろう。

再エネ電力の拡大にむけて、いま最も求められているスタイルが全量自家消費型なのだ。

事業に全量自家消費型太陽光発電が注目されている背景

自家消費型太陽光発電

近年、全量自家消費型太陽光発電を導入する事業者が増えている。全量自家消費型太陽光発電が注目を集める理由は何か。その背景について説明していこう。

売電価格の低下と電気料金の上昇

全量自家消費型が注目される背景において、売電価格の低下と電気料金の上昇は外せない要素だ。

太陽光発電の売電価格は年々下がっている。2019年度に始める10kW以上の太陽光発電は、1kWhあたり14円で電気を売ることになる。

一方、電気料金は毎年高くなっている。原因の1つは再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)の値上がりだ。再エネ賦課金とは、固定価格買取制度で電気を買い取るコストの一部を、全ての消費者から徴収する制度である。

得られる売電収入は下がり、支払う電気料金は値上がりしている。つまり、多くの電力が必要な事業では、電力会社から電気を買うよりも全量自家消費の方が経費削減効果が期待できるだろう。

中小企業の節税対策になる

法人税100%償却や固定資産税軽減など、太陽光発電の導入は中小企業にとってメリットになる税制優遇が多い。

10kW以上の産業用太陽光発電の場合、発電した電力を自家消費に用いることで、企業の生産性を向上させる設備と判断される。結果、事業用の資産として認められ、企業の設備投資を対象とした税制措置を受けることが可能だ。

企業の環境への取り組みが注目されている

地球環境保全に対する意識が高まっている中、RE100を意識した企業活動が要求されている。RE100とは、将来に向けて100%再生可能エネルギーによる事業活動を目標とした国際イニシアチブ(計画)のことだ。

日本でも有名な世界的企業をはじめ、多くの大手企業がRE100に加盟している。これらの大手企業は自然環境の取り組みを強化しており、下請けの中小企業に対しても自然エネルギーの利用を求める動きがある。

したがって、RE100に直接加盟しない中小企業であっても、全量自家消費型太陽光発電の導入により、今後のビジネスチャンスが広がる可能性が期待できる。

太陽光発電を自家消費する費用の内訳

太陽光発電を自家消費する費用の内訳

太陽光発電の自家消費による企業のメリットは多い。しかし、設置する際にどの程度の初期費用がかかるのかは、多くの事業者が気にするところだろう。設備投資にかかる費用の内訳について詳しく見ていこう。

太陽光発電の設置費用の内訳

産業用太陽光発電の費用は、大まかに下記の3つに分けられる。

  • 太陽光パネルやパワーコンディショナーなどの発電機器
  • 工事費用
  • 発電所以外の費用(電力会社に支払う費用・フェンス・土地の整地工事など)

自家消費型太陽光発電の設置にあたっては、できるだけ導入コストを抑えることが大切だ。太陽光パネルやパワーコンディショナーなどの機器は、メーカーによってシステム費用が7~8万円ほど差が出る可能性がある。

自家消費用の太陽光発電の費用対効果を高めるには

自家消費用の太陽光発電

太陽光発電の売電価格は年々下がっており、今後も売電による旨味は減少していく可能性が高い。逆に、電気料金は上昇する傾向にある。これからは全量売電での太陽光発電を検討するより、自家消費型太陽光発電を導入して電気料金の削減を狙った方が得だろう。

投資費用の回収の面では不安視される向きもある。しかし、売電価格の値下がりに対して、太陽光発電の設備費用が下がっている点は有利なポイントだ。

さらに投資効果を高めるには、導入コストはなるべく抑える工夫をしておきたい。そのためにも複数の業者の見積もり比較は重要だ。10kW以上の産業用太陽光発電を検討するなら、タイナビNEXTで見積もりをしてみてはどうだろう。