パワーコンディショナの選び方

産業用太陽光発電システムというと、工場の屋根や広い敷地に設置された「太陽光パネル」をイメージする人が多いでしょう。しかし、実際に太陽光パネルで集めた太陽光を使って発電するためには、「パワーコンディショナ」という部材も必要なのです。

パワーコンディショナは、太陽光パネルで発電した電気を使用できる電気に変換する機能を持っており、選び方を間違えると発電量や発電効率にも影響しかねません。

この記事では、パワーコンディショナの役割や選び方について詳しく紹介します。

産業用太陽光発電におけるパワコンの役割

産業用太陽光発電において、パワーコンディショナはどんな役割を担っているのでしょうか。ここでは、パワーコンディショナの主な役割について紹介していきます。

太陽光パネルで発電した電気を変換する役割がある

パワーコンディショナの大きな役割は、太陽光パネルで発電した電気を使用できる電気に変えることです。

太陽光パネルで太陽エネルギーは電気に変換されます。しかし、この電気は「直流電力」なので、事業所や家庭でそのまま使うことはできません。これを「交流電力」に変えて、一般家庭や事業所などでも使える電気にするのが、パワーコンディショナの役割です。

パワーコンディショナを設置することで、交流に変換された電気は屋内の電線を通して使用でき、余った電気については電力会社に売電できるようになります。

パワーコンディショナは太陽光パネルと同様に、太陽光発電を行うために欠かせない存在なのです。

太陽光パネルの発電量を最大化する役割がある

太陽光パネルの発電量は、天候などの日射条件によって大きく違ってくるため、電圧と電流も不安定です。この不安定な太陽光パネルをコントロールし、常に最大の電力出力が出せるポイントを探すのもパワーコンディショナの役割です。

パワーコンディショナは、ランダムな電圧と量で流れてくる太陽光パネルからの電気を、安定かつ最大量で取り出せるように調整する機能を果たしています。最大の電力出力を必要とする大規模な産業用太陽光発電システムでは、特に重要となる機能です。

産業用太陽光発電に最適なパワコンを選ぶポイント

パワコンの選び方

パワーコンディショナを選ぶ際には、最大定格出力や変換効率以外にも注意すべきポイントがあります。ここでは、最適なパワーコンディショナを選ぶためのポイントについて説明します。

無料保証期間の長さを考慮して選ぶ

パワーコンディショナの修理費用は思わぬ出費となるため、無料保証期間の長いものを選ぶのがポイントです。

一般的に、パワーコンディショナの寿命は10年ほどで、寿命が20年といわれる太陽光パネルよりも耐用年数が短くなっています。メーカー保証期間も一般的には10年〜15年ほどです。無料保証期間が切れたあとの修理代や買い替え費用についても備えておくことが大切です。

パワーコンディショナの不具合を放置すると、発電量が少なくなってしまいます。そうなれば売電収入は減り、自社の電気をまかなっている場合は使える電気が少なくなるため、どちらにしても経済的メリットが減ってしまうのです。

最悪の場合には、火災につながることもあります。パワーコンディショナのメンテナンスは、リスクを回避するためには欠かせないポイントです。

騒音が少ないパワーコンディショナを選ぶ

パワーコンディショナを稼働させると、どうしても稼働音が発生します。さらに、冷却する空調設備も必要なため、両方の音を合わせると70dB程度まで達することがあるのです。

産業用太陽光発電の規模が大きくなると、それに対応してパワーコンディショナも大型化し、複数台必要となります。

きちんとした騒音対策をとらないと騒音トラブルにつながりかねません。そのため、近隣に住宅などがある場合には、騒音が少ない50dBほどのパワーコンディショナを選ぶのがポイントです。

また、状況によっては、設置場所を工夫する、防音壁で囲むなどの配慮が必要になります。

出力制御時の対応に注目して選ぶ

産業用パワーコンディショナは、出力制御時の対応にも注目して選ぶことも大切です。

完全自家消費のシステムでない場合には、出力制御が関わってきます。出力制御とは、電気の需要と供給のバランスを取るために、太陽光発電で得た電力を系統へ出力することを一時的に停止する、または抑制する制度です。

パワーコンディショナを制御する働きを持つ「出力制御ユニット」と連携できる、出力制御に対応可能なパワーコンディショナが必要になります。

出力制御の対象エリアが拡大するなか、すでにほとんどのパワコンは対応しているので安心してください。メーカーによって対応する出力制御ユニットが異なり、遠隔監視がセットになったタイプなどもあります。

パワコンの機能そのものだけでなく、どんな出力制御ユニットと接続可能で、出力制御時どのような対応になるかも選ぶ参考にするとよいでしょう。

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MPPT制御機能に注目して選ぶ

産業用パワーコンディショナは、「MPPT制御機能」に注目して選ぶのがポイントです。MPPT制御機能とは、常に最大の発電量を得られるように自動で調整するシステムのことです。

太陽光パネルには、出力が最大となる電流と電力の組み合わせがあり、気温や日射量により変化します。MPPT制御は、常に最適な地点を追従することができる優れた機能を備えているのです。日々異なる天候のなかでも、ソーラーパネルの発電力を最大限に生かすことができます。

一般住宅用のパワーコンディショナでもMPPT制御機能が搭載されているものはあります。一般住宅より規模が大きく、発電効率がより重要となる産業用太陽光発電システムにおいては必須の機能といえるでしょう。

MPPT制御機能には「集中型」と「マルチストリング型」があります。太陽光パネルとパワコンをつなぐ回線が1つの集中型に対し、太陽電池ストリングごとに回線があるのがマルチストリング型です。

そのため、マルチストリング型の場合は、ストリング単位で違うパネルを利用できるなど、パネル設計が柔軟になるメリットがあります。大規模なシステムを長く運用する際には、ストリング型のほうが将来的に有利になるでしょう。

BCP対策で注目するべきパワコンの機能

BCP対策

突然の停電に見舞われたとき、業務が中断されることに加えて大切なデータが失われるなどの大ダメージを受けるリスクがあります。このような事態に備えるのがBCP対策です。

事業のリスクを最小限にするBCP対策に、太陽光発電は有効です。ただし、機材の選び方によっては、期待した効果が得られない可能性があります。

多くのパワーコンディショナは、停電下で太陽光発電の自家発電を始めるために手動操作が必要です。自動的に自立運転モードに切り替えるには、そういった機能を持つパワーコンディショナを選ばなければなりません。

一瞬たりとも電力供給を途絶えさせない環境を求めるなら、無停電電源機能をもつ蓄電池が必要なのです。

BCP対策は「重要業務が中断しないこと」「リスクを最小限にすること」が目的です。BCP対策に対応した蓄電システムがあるパワーコンディショナを選べば、停電時でも太陽光発電で作られた電気を非常用電力として使えます。

蓄電システムを備えたパワーコンディショナを導入することで、災害時でも安定した電力の供給をすることができます。

産業用太陽光発電のパワコンを選ぶために理解しておくべきこと

産業用太陽光発電のパワーコンディショナには、押さえるべきポイントがあります。ここでは、パワーコンディショナを選ぶために理解しておくべきことを解説していきましょう。

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最大定格出力を理解する

どのパワーコンディショナにするかを決める際には、まず最大定格出力について理解することが大切です。最大定格出力とは、パワーコンディショナが送電できる最大電力のことです。

たとえば、太陽光パネルから最大定格出力を超える電力が送られてきても、パワーコンディショナは超えた分を受け入れることができません。そのため、エネルギーとして変換されずにロスが生まれてしまうのです。

最大定格出力が高いパワーコンディショナであれば発電の効率は高くなりますが、その分価格も高くなるという傾向があります。

パワーコンディショナの定格容量よりも、太陽光パネルの最大出力が低いのが基本とされています。パワーコンディショナのなかには、定格容量の1.2倍~1.3倍の太陽光パネルが接続できるものもあります。これは、多くのシステムでパワーコンディショナ以外の機器の条件によっても、実際の発電量は8割程度になると見られているためです。

変換効率を理解しておく

最適なパワーコンディショナを選ぶためには、変換効率についても理解しておくことが大切です。変換効率とは、太陽光パネルが発電した電気を使える電力に変換する効率のことです。

太陽光パネルで発電した直流の電気をパワーコンディショナで交流に変換する際には、どうしてもロスが生じてしまいます。ロスが少なく、変換効率が高いパワーコンディショナを導入すれば、消費できる電力や売電収入を増やすことが可能です。

変換効率はメーカーや製品によっても異なり、多くは94.0~95.0%、なかには97.5%と高性能なパワーコンディショナもあります。変換効率は、消費できる電力量や売電収入に直接影響するので、しっかりと確認することが大切です。

太陽光発電システムで作った直流の電気を交流に変換する際に、多少のロスが発生することを変換ロスといいます。変換ロスが多いほど、その分売電価格にも影響してしまうので注意が必要です。

たとえば、予想できる年間売電量が100MWhだった場合には、変換効率が仮に1%違っただけで、変換ロスにより逸失する電力量は1000kWhにも及びます。売電価格が13円なら年間1万3000円のロスが出てしまうので、変換効率も見逃せないポイントです。

出力レベルごとの変換効率特性があることを理解しておく

変換効率は、出力レベル(出力値)によって変化する場合があります。ただし、どのように変化するのかは製品それぞれに特性があるため一律ではありません。

たとえば、最大出力時の変換効率は高くても、朝夕や曇りの日といった低出力時は変換効率が低くなってしまう製品もあります。一方、低出力・高出力に関わらず、平均的な変換効率で推移していく製品もあるのです。

低出力時でも高効率で発電できる機種なら、日照量が少ない時でもより多い電力量を得られます。単に最大変換効率だけに注目するのではなく、出力ごとの変換効率特性にも注目して製品を選ぶことをおすすめします。

産業用パワーコンディショナの主要メーカー

この段落では、産業用パワーコンディショナの主要メーカーについて説明していきます。メーカーの特徴などのほか、主な製品の定格容量や変換効率などのスペックについても紹介するので参考にしてください。

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パナソニック

家電製品でも大きなシェアを持つパナソニックは、生活に欠かせない製品も多い身近なメーカーといえるでしょう。公共事業や産業用太陽光発電システムでも、豊富な実績があるのが特徴です。

商品バリエーションも豊富なので、ニーズに応じた選択肢も多くあります。パナソニックのパワーコンディショナ「VBPC244B1」の定格容量や変換効率などを紹介します。

【VBPC244B1】

定格容量:4.4kW
変換効率:96.0%
電気方式:単相2線式
使用温度範囲:-20~50℃
外形寸法:706mm×407mm×214mm
質量:30kg

安川電機

安川電機は、1974年に世界で初めてトランジスタインバータの販売を開始しました。2018年にはインバータの累計出荷台数が2700万台を達成し、業界初となる販売記録となっています。

定評のあるインバータ技術を活かし、パワーコンディショナも展開してきた実績のあるメーカーです。安川電機のパワーコンディショナ「XGI1000-65」のスペックは以下の通りです。

【XGI1000-65】

定格容量:65kW
変換効率:97.0%
電気方式:三相4線式
使用温度範囲:-40~55℃
外形寸法:720mm×1165mm×295mm
質量:86kg

田淵電機

田淵電機は、大阪に本社がある電気機器メーカーです。住宅用太陽光発電のパワーコンディショナは、国内累計シェア1位を誇っています。積み重ねてきた技術を活かし、産業用パワーコンディショナも多数のラインナップがあります。

田淵電機のパワーコンディショナ「EPD-T250P6」を例に、定格容量や変換効率などのスペックを紹介しますので参考にしてください。

【EPD-T250P6】

定格容量:25kW
変換効率:97.0%
電気方式:三相3線式
使用温度範囲:-20~60℃
外形寸法:950mm×640.6mm×300mm
質量:69.8kg

オムロン

オムロンは大手電気機器メーカーで、1988年からは各国に拠点を持ち海外進出も果たしてきました。ヘルスケア部門は身近で、オムロンの体重計などを目にする機会も多くあるでしょう。自動血圧計では世界No.1のシェアを獲得しています。

太陽光発電システムにも力を入れており、家庭用・産業用システムの両方を展開しているのが特徴です。オムロンのパワーコンディショナ「KPT-A123」の性能は以下の通りです。

【KPT-A123】

定格容量:12.375kW
変換効率:93.5%
電気方式:三相3線式
使用温度範囲:-20~50°C
外形寸法:600mm×675mm×305mm
質量:63kg

GSユアサ

GSユアサは、古くから太陽光発電事業へ取り組んでいる歴史ある会社です。1993年からは太陽光発電用パワーコンディショナ「ラインバック」シリーズを展開してきました。

公共産業用中心に、幅広い出力の商品をラインナップし、小容量からメガソーラーにまで対応しているのが特徴です。ここでは「LBBEA-250-T34」の定格容量や変換効率などを紹介します。

【LBBEA-250-T34】

定格容量:250kW
変換効率:95.5%
電気方式:三相3線式
使用温度範囲:-10~40°C
外形寸法:1200mm×1000mm×1900mm
質量:2000kg

事業にフィットする太陽光発電は一括見積もりで安く設置できる

太陽光発電一括見積もり

太陽光発電の導入を検討する際には、どうしても太陽光パネルの発電効率などに意識がいきがちです。しかし、パワーコンディショナについても、しっかりと検討することが大切なのです。

性能や価格の面からも最適なパワーコンディショナを選ぶためには、いろいろなメーカーや施工業者を比較検討しなければなりません。良質な業者を見つけるために必須なのは、相見積もりです。

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