オフィスに蓄電池を入れるメリット

大災害による停電を教訓に、非常時の事業継続について対応策を練る企業が続出している。中でも、産業用蓄電池は災害時にも企業活動を継続するために有効である。

ここでは企業が蓄電池を導入するメリット、価格帯について解説していく。導入コストとメリットを考慮し、蓄電池を検討していこう。

非常時以外も得する!オフィスに産業用蓄電池を導入するメリット

オフィスビルで地震などの災害による停電が起こった場合、大きなダメージを受けることも予想される。蓄電池は、電力会社からの送電が途絶えた時でも電力を使えることから、非常用電源としてのイメージが強いだろう。

いつ来るかわからない非常時への備えは大切だが、それにしては蓄電池のコストが高すぎると感じてしまうのは当然だ。

そこで、蓄電池が平常時の企業運営にも大いに役立つという件について解説させていただこう。

ピークカットで電力コスト削減効果がある

電力コスト削減

国や地方自治体では、オフィスの省エネや節電を促進するためにエネルギーの有効活用を推奨している。電気料金を抑えるために、産業用蓄電池が使えるのだ。

法人が契約する高圧電力などは、一般家庭の契約とは料金の決め方が異なる。短時間に契約量を超える電力を使ったといって、ブレーカーを落とすことはできないのだ。そこで、「実量制」で契約電力を定めるのである。

実量制で電力を契約している事業者は、蓄電池で基本料金を安くできる可能性があるのだ。

実量制は30分ごとの使用電力量(最大需要電力)を計測し、過去1年間で最も大きかったものを基準にして基本料金を設定する方式だ。つまり、30分ごとの平均使用電力が大きくなるほど、基本料金も上がるということである。

実量制で蓄電池を用いて電力コストを抑えるには、使用する電力量が増えてきたときに蓄電池から放電すればよい。この方法で最大需要電力を下げ、基本料金を抑えることができるのだ。

自家消費用太陽光発電との併用でCO2削減効果を増大

自家消費用太陽光発電との併用でCO2削減効果

太陽光発電と蓄電池を組み合わせることでも、電力コスト削減効果が見込める。

CO2排出量対策で太陽光発電を設置しても、夜間には電力会社の電力を買うことになってしまう。割高な再エネプランを契約するか、非化石証書などを用いる手もあるが、電力コストに対する支出を減らすことができない。

そこで蓄電池を使えば、昼間の太陽光発電で使いあました電力を貯蔵しておけるのだ。産業用の太陽光発電は、発電コストが13円/kWh ※まで低下している。契約中の電気料金プランによっては、太陽光発電の電力を積極的に使っていくほうが安くなる可能性があると言えよう。

※ データ出典:国立研究開発法人NEDO

停電への備えに使える

オフィスビルには停電に備えて非常用電源があるものの、階段やエレベーターなど必要最低限の電力しかまかなえない。大規模停電が起こったときに企業活動を継続するには、非常用電源のほかに産業用蓄電池が必要なのだ。

ただし、産業用蓄電池は停電時の自動切り替えができる機種、できない機種がある。データ破損が深刻な損害になり得る業種であれば、蓄電池の機能をよく確認しておこう。

産業用蓄電池の種類と1kWhあたりの価格

産業用蓄電池を検討する場合、目安となる価格を押さえておく必要がある。

蓄電池の価格は種類やメーカーによって異なるが、産業用蓄電池は鉛電池・ニッケル水素電池・リチウムイオン電池・NAS電池(ナトリウム硫黄)など選択肢が豊富だ。

畜電池には、価格のほかにも電池寿命や安全性、資源上の制約などの比較材料があるので、それぞれの使用目的に合わせて選択をするといいだろう。

まずは、産業用蓄電池の種類ごとに1kWhあたりの価格を比べてみよう。

蓄電池の種類価格/1kWh
NAS電池(ナトリウム硫黄)4万円
鉛電池5万円
ニッケル水素10万円
リチウムイオン20万円

1kWhあたりの価格をみると、鉛電池とNAS電池はコストが大幅に安いことが分かる。

リチウムイオン電池はエネルギー密度が高く、コンパクトなことから産業用蓄電池として広く普及している。ニッケル水素電池は、ハイブリットカーや鉄道など車載用蓄電池として利用されているものだ。

産業用蓄電池としては、リチウムイオン電池が今後も広く普及する見込みである。主なメーカーの産業用蓄電池ごとのメーカー希望価格や蓄電容量、定格出力を比較してみよう。

産業用蓄電池の価格をメーカーごとに比較

では、産業用蓄電池の価格はメーカーごとにどのように異なるのだろうか。主なメーカーの蓄電池価格を比較してみよう。

メーカー品番メーカー希望小売価格蓄電容量定格出力
パナソニックLJ-SA16A5K/LJ-SA16A6K132万円(税抜)1.6kWh700VA
パナソニックLJ-SA32A5K/LJ-SA32A6K160万円(税抜)3.2kWh700VA
デジレコELE-CUBE LIF-320075万円4.8kWh1.5kVA
デジレコELE-CUBE SP-950047万円2.4kWh1.5kVA
デジレコELE-CUBE SP-240047万円2.4kWh1.5kVA

パナソニックLJ-SA16A5K/LJ-SA16A6Kの充電時間は約12時間で、最大消費電力500W程度での使用可能時間は約22時間である。

同じパナソニックのLJ-SA32A5K/LJ-SA32A6Kの充電時間も約12時間で、1万W程度で約15時間使用できる。デジレコのELE-CUBE LIF-3200は、約8時間の充電をすれば1500W程度で約2時間使用できる。

ELE-CUBE SP-9500は充電時間が約16時間、1500W程度で約4時間使用可能。ELE-CUBE SP-2400は、約7時間の充電をすれば最大1500W程度で約1時間使用できる。

産業用蓄電池の価格はメーカーや機種ごとに異なるため、ほかの要素との比較も含めて検討するといいだろう。どのような目的や用途で蓄電池を利用するのかを明確にして選択すると効率的である。

産業用蓄電池の設置費用他の導入コスト

産業用蓄電池の設置費用他の導入コスト

産業用蓄電池を購入するにあたっては、導入コストを考慮するべきだ。本体価格の他にも必要なコストがある。蓄電池本体の価格以外にかかる設置工事費用、電気工事費用、足場費用などが、蓄電池の導入コストの内訳だ。

産業用蓄電池の導入コストは、電池の種類によって変わる。

鉛蓄電池は1kWhあたり5万円程度だが、リチウムイオン電池は1kWhあたり20万円と大変高価である。鉛は安定供給できるが、リチウムは希少で高価な材料であることから、価格差が大きくなっている。

さらに、出荷台数が伸びている定置用リチウムイオン蓄電池は、1kWhあたり30万円と、リチウムよりも高価になっている。

工賃などは設置環境や、依頼する施工店によっても差が大きい。導入費用を抑えるなら、最低でも5社前後からは相見積もりを取得して比較するべきだ。