EV100

世界中の国や企業が環境保全に取り組むなか、社用車のあり方を変える「EV100」も広まりつつある。運輸など自動車のCO2排出量は、日本のCO2総排出量の15.4%を占めるほど大きい(参考:国土交通省 2017年)。

この記事では中小企業にとって「EV100」がどのような影響を与えるのか、環境保全に取り組むメリットについて紹介する。

EV100の基礎知識

「EV100」は、企業が利用する車両を、2030年までに100%EV(電気自動車)にしようという取り組みである。

事業に必要なエネルギーを100%再生可能エネルギーでまかなうことを目標とした「RE100」や、省エネ効率50%改善を目標とした「EP100」と並ぶ国際ビジネスイニシアチブだ。

EV100の加盟企業は以下の4つの取り組みのうち少なくとも1つを公式にコミットする必要がある。

  • 電気自動車の使用について、サービス契約に規約を作る。
  • 企業が所有もしくはリースする車両を電気自動車にする。
  • 従業員の電気自動車の利用を勧めるために、すべての関連施設のなかに電気自動車用充電設備を設置する。
  • 顧客の電気自動車の利用を勧めるために、すべての関連施設のなかに電気自動車用充電設備を設置する。

EV100の加盟企業

EV100

2017年に発足したEV100には国内外で多数の企業が加盟している。この項では、日本と海外の加盟企業をそれぞれ紹介しよう。

イオンモール株式会社

2017年に日本企業で初の加盟。ショッピングモールにEV充電器を設置し、電気自動車で安心して買い物ができる環境を整えている。

アスクル株式会社

2017年に日本企業で初めて「RE100」「EV100」の加盟を発表。配送を行うグループ企業の全配送車両を2030年までにEV化することに取り組んでいる。

NTT日本電信電話株式会社

2018年に加盟、電気通信事業者では世界で初めての事例。さらに、世界初の「EP100」の同時加盟も行う。NTTグループが所有する車両を2025年までに50%EV化し、2030年までに100%EV化すること目標としている。

東京電力ホールディングス株式会社

2019年に、国内エネルギー企業として初めて「EV100」に加盟。2030年までに全業務車両を電動化することを目指す。

株式会社高島屋

2019年に「RE100」「EV100」に加盟。2030年までに直接管理車両を100%電気自動車化することを目指す。

海外の加盟企業

次に海外のEV100加盟企業の例と、その目標や実際の取り組みについて説明する。

IKEA(スウェーデン)

2020年までにニューヨーク、ロサンゼルス、アムステルダム、パリ、上海においてラストマイル配送で電動化することを目標に掲げ、1年早く達成している。

METORO AG(米国)

2030年までに、小売スペース1㎡あたりCO2の排出量を2011年の半分以下にするという目標を掲げている。そのために、従業員用の充電ステーションを設置済み、世界中の店舗でも約100の充電器を設置している。

Deutsche Post DHL Group(ドイツ)

2050年までにゼロエミッション(生産活動の結果、排出される老廃物をなくす)ロジスティクスを提供することを目標に掲げている。そのために、配達車両を電気自動車に置き換えることを目指している。

EV100加盟による企業の狙い

EV100加盟による企業の狙い

EV100に加盟すると環境保全の面だけでなく、企業にとって大きな利点がある。この項では、EV加盟企業の狙いについて解説する。

認知度やブランド力の向上

温室効果ガスの排出量は増加の一途をたどり、企業が率先してEV化を進めることが求められている。EV100へ加盟することは、EV100への加盟は、地球規模の環境保全に対する意志表明でもある。

企業の認知度やブランド力の向上につながり、顧客の信頼を得ることができる。今後、顧客が自社製品やサービスを選ぶ際のひとつの基準になっていくだろう。

機関投資家の信用の獲得

企業のEV100への加盟の背景には、機関投資家の信用獲得という目的も挙げられる。
昨今は地球規模で「脱炭素化社会」を目指しており、脱炭素に取り組む企業には税制優遇などの措置がある。逆に、環境保全に対して無頓着な企業にはペナルティが課せられる。

世界の機関投資家は、脱炭素を目指す企業に対して積極的に投資を行う傾向がある。機関投資家に選ばれるために、脱炭素への取り組みの一環としてEV100に加盟する企業が増えているのだ。

CO2排出量削減により税制優遇も

CO2排出量削減により税制優遇がある。温室効果ガスのなかでも大きな割合を占めるのがCO2(二酸化炭素)であるためだ。再生可能エネルギーを多く活用すれば、二酸化炭素の排出量を抑えられることから、各国で再生可能エネルギーの導入を推進している。

日本でも国や地方自治体が脱炭素化に対する税制優遇や補助金などを出している。例えば、東京都では、電気自動車の導入に関して法人・個人事業主向けに最大で25万円の助成金が出る。

さらに、再生可能エネルギーである太陽光発電システムの導入にも税制優遇や補助金などの優遇措置がある。発電した電気の自家消費が前提だが、EVへの充電に使えば充電費用の削減と、CO2排出量の低減が同時にできるのだ。

中小企業が脱炭素を進めるメリット

脱炭素を進めるメリット

世界的な企業や国内の大企業でも、環境負荷のかかる化石燃料から再生可能エネルギーへの転換となる脱炭素化が取り組まれている。

この脱炭素化の流れは、中小企業には無関係に見えるかもしれない。しかしEV100だけでなく、その他のRE100やEP100などの国際イニシアチブに加盟する大企業が、その目標達成を目指している。

そのために、より環境負荷のかからない製品・サービスづくり、事業運営に際して、取引先である中小企業にも脱炭素化を求める動きがある。

そこで中小企業としても脱炭素化を積極的に進めることで、大企業から新たな取引先として選ばれるチャンスを獲得できる可能性がある。これは大きなメリットとして捉えることができるだろう。

脱炭素でビジネスチャンスをつかもう

時流が読めている大手企業と取引するうえで、脱炭素化に取り組む姿勢は欠かせない。できることから脱炭素化への取り組みを進めていこう。

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