太陽光発電と雪国

「所有している土地に太陽光発電を建設したい」と思っているものの、積雪地域であるために諦めてしまっている人もいるのではないだろうか。

確かに、雪国での太陽光発電には、どうしても雪の影響を受けてしまうところがある。しかし、雪国ならではの有利な点、さらに積雪に対応した機器もあるため、積雪や降雪という要素だけで諦めてしまうのはもったいない。

実際に、投資目的で雪国の太陽光発電物件を購入し、収益を上げている人も存在する。ここでは、日照量や収益の面も含め、雪国での太陽光発電の有利な点や注意点などについて解説する。

降雪・積雪が太陽光発電に与える影響

太陽光発電の収益状況は、天候の影響を大きく受ける。それでは、雪が降ったり積もったりした場合、実際にどのような影響があるのか。以下、順番に見ていくことにしよう。

積雪で発電量が減少する

太陽光発電は太陽の光をエネルギーに変えて発電をするため、当然のことながら快晴の日が最も発電量が多い。逆に、日照量が少ない曇りや雨、雪の日では発電量が減ってしまう。

しかも、曇りや雨とは違って、雪の場合は「積もる」という特徴があるので厄介だ。もし雪が長く降り続いてパネルの上に積もってしまうと、発電量が大幅に低下する、ほとんど発電しなくなる、といった可能性もある。

ただし、短期間であれば降雪があっても発電は可能なため、雪の多い地域に居住している方も安心してほしい。実際に、年間降雪量が200cm以上の豪雪地帯でも、12月~2月に平均の5割程度は発電しているというデータもある。

雪の重みで機器類が損傷する

積もった雪の重みによるパネルの損傷も、太陽光発電のリスクとして懸念されるところだ。太陽光パネルにはメーカーごとに耐荷重が定められている。例えば、パナソニック「HIT」高強度タイプ 120Aであれば、正圧6000Pa(4箇所固定)といった具合だ。

耐加重は安全に太陽光パネルを使用するための重要な前提条件である。もし、その基準を超えるような大量の雪が積もった場合、重さでパネルが変形したり、破損したりする可能性があるのだ。さらに、雪はパネル以外の部分にも影響を及ぼすおそれもある。屋根の上に設置した場合ではパネルと雪の重みで建物に影響が出たり、野立ての場合は重みで支柱が折れたりする。

このように、雪は太陽光発電にとっては重要なリスクの1つといえる。積雪地域に設備を設置する場合は、雪国仕様のパネルを使用する、パネルに積もった雪を落ちやすくする、といった設置方法の工夫で対処しよう。

パネルから落雪する危険がある

設置者としては、落雪による危険についても留意しておくべきだ。

太陽光パネルは、一般的な建物の屋根よりも滑りやすい材質のため、パネルに積もった雪が落ちる際には勢いよく落下する。この時、落下した先に人がいれば、重大な事故につながりかねない。

郊外の広い敷地に設置する場合はこうしたリスクは少ないが、人通りがある場所や屋根の上にパネルを設置する場合は、注意が必要である。落雪による人や住宅、車などへの被害を防ぐためにも、落雪防止の器具を取り付けるなどしてあらかじめ対処しておこう。

積雪地帯だからこそ得られる太陽光発電のメリット

ここまでの段落では、雪国で太陽光発電を行う際のデメリットばかりを紹介した。そのため、「雪国では太陽光発電は不利」と感じている人もいるのではないだろうか。

しかし、積雪地域で太陽光発電を始めることには、実は他の地域にはないメリットがある。以下、順番に見ていくことにしよう。

雪国の夏は気温が低く発電ロスが少ない

1つ目のメリットは、夏場に高いパフォーマンスが期待できることである。

実は、太陽光パネルは極端な暑さには弱い。パネルの表面温度が25℃の時に最も発電効率が良くなり、そこから1℃上昇するごとに出力が0.4%程度ずつ低下するといわれているのだ。

特に、30℃を超えるような夏場では、パネルの表面温度は70~80度ほどまで上昇する。その結果、発電量が平常時に比べて30%もダウンするような事態も珍しくない。

一方、北海道、東北、北陸など、雪が多い地域は、他の地域に比べて夏の気温は低く、また、気温が高くなる期間や時間も少ない傾向がある。例えば、札幌の8月の平均気温は約26℃で太陽光発電においては理想的な環境に近い。

このように、積雪地帯は、夏場の発電パフォーマンスの低下が少なく、他の地域より有利に発電できるという特徴がある。たとえ冬場の平均的な発電量が少なかったとしても、夏にその分を取り返すことも可能だ。

台風の上陸が少ない

2つ目のメリットは台風の上陸回数が少ないことだ。九州・沖縄地方と比べて、東北・北陸は台風の上陸回数が少ない。

強風や大雨を伴う台風は、屋外に設置する太陽光発電システムにとっては、大きなリスクになり得る。確かに、架台や屋根にしっかりパネル等が固定されていれば、強風によって設備が飛ばされるケースはまれかもしれない。

しかし、それでも飛んできた枝や石などがパネルを傷つける可能性はあり、実際にそうした事故も多く発生している。こうした不安要素が少ないのは、積雪地域のメリットの1つといえるだろう。

太陽光発電は雪国でも投資する価値がある

積雪という不利な要素はあるものの、年間を通して考えれば雪国の太陽光発電に投資する価値は十分あると考えられる。この段落では、年間日照量と年間予想発電量という2つのデータから、この仮説を実証していくことにしたい。

積雪地域の年間平均日照量は少なくない

実は、積雪地域の年間平均日照量は、他地域と比べても遜色ない水準に達している。

日本各地の年間平均日照量を見てみると、福岡が3.78(kWh/㎡/日)なのに対し、札幌は3.93、長野は3.95となっている。晴れが多いイメージの九州よりも、積雪地域の北海道や長野の方が日照量が多いという興味深い結果が出ているのだ。

その結果、システム容量1kWhあたりの年間予想発電量も、福岡1007(kWh/年/kW)に対して、札幌1047、長野1052と積雪地域であるにも関わらず、札幌・長野の方が多いという予想になっている。

実際に雪国で計画以上の売電ができた前例も

実際に、雪国で予想していた計画以上の売電に成功したという事例もある。

2012年のデータになるが、山形市に設置した太陽光発電システムが11,537kWhの年間発電量を叩きだし、その結果設置者は約48万円の利益を得た。

この時のシステムの導入費用は約400万円で、利回りは480,000円÷4,000,000円=12%。8年くらいで初期費用を回収できる、という結果になった。これは、初期費用回収にかかる期間としては、平均よりも2、3年は短い。

確かに、7年前は売電価格も42円/kWhと高かったが、その代わり設備費用も現在よりもかなり高かった。売電価格も設置にかかる費用も下がった現在と、利益率を単純計算で比較することはできないが、少なくとも「雪国でも効率の良い発電はできる」という裏付けになる。

雪国で太陽光発電を始めようとしている人にとっては、価値の高い成功事例といえるのではないだろうか。

https://www.tainavi-next.com/library/253/

雪国で太陽光発電を設置する際のポイント

雪国で太陽光発電を設置する場合は、雪対策のために設置方法、物件探しなどについて様々なポイントがある。以下、それらのポイントについて説明する。

雪国に適したパネルを選ぶ

1つ目のポイントは、雪国に対応したパネルを選ぶことである。

雪国に設置する太陽光発電設備には、雪の重みでパネルが破損、変形するリスクがある。そこで、積雪を想定した機器選びが重要になるのだ。

例えば、パネルの強度がそうである。パネルの強度はJIS規格で2,400Paと定められているが、雪国仕様のパネルになると、この数値が2倍以上になる。以下、各メーカーの雪国仕様のパネルのスペックについて見てみよう。

・カナディアンソーラーCS3U-375/380MS
正圧荷重5,400PaとJIS規格の2.25倍の強度となっている。

・三菱電機のPV-MG225CBXS
パネルの背面にプロテクションバーを採用することで最大4800Paの積雪荷重を確保し、1m以上の積雪にも耐えられる仕様だ。

・パナソニック「HIT」シリーズの325A
正圧荷重5,400Paとカナディアンソーラーと同等の強度である。

このように、雪国仕様のパネルでは、積雪があっても安心して使えるだけの強度が確保されている。豪雪地帯でも十分に対応できるので安心してほしい、

雪国での設置に慣れている施工業者を選ぶ

雪国で太陽光発電を設置するなら、雪の多い地域ならではの設置方法や工夫をする必要がある。したがって、雪国ならではの事情に詳しく、また専門的な知識や実績がある施工業者を選ぶことが重要だ。

こうした雪国に強い施工業者は、独自のノウハウを持っている。例えば、人や建物への影響がない場所であれば雪が自然落下しやすいようにする、影響がある場所では落雪防止の設備をつける、野立ての場合は滑り落ちた雪が溜まっても大丈夫なだけのスペースを確保するなどだ。

もし設置を依頼するなら、こうした雪の特性や雪国特有の事情に明るい業者を選ぶと安心できるだろう。

https://www.tainavi-next.com/library/224/

雪国の太陽光発電は投資の価値あり!施工業者選びは慎重に

雪国の太陽光発電は確かに冬場は雪の影響を受けるが、だからといって太陽光発電に不向きというわけではない。あくまでも、台風の影響、日当たりの悪さといった、太陽光発電にとって不利になる要素の1つでしかない。

ただし、雪国には雪国に適した設置方法があるため、実際の設置にあたっては業者に専門的な知識と豊富な経験が求められる。したがって、金額の安さだけで施工業者を決めてしまうのは危険といえるだろう。

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