
産業用太陽光発電のメンテナンス費用はなるべく抑えたいところだ。しかし、お金を出し渋ってメンテナンスを怠ることのリスクは重い。
ソーラーパネルの汚れや機器の不具合によって発電量が低下する恐れがある。もっと悪い場合は、固定価格買取制度(FIT)の認定を失うリスクもあるのだ。
太陽光発電システムを設置した後で想定外のコストに慌てないよう、メンテナンスの重要性やメリット、点検内容、費用相場などを事前にチェックしておこう。
メンテナンスは「義務」さらに投資家のメリットも
産業用太陽光発電をしっかり運用するなら、メンテナンスは必須である。2017年の改正FIT法によりメンテナンスが義務化された。太陽光発電を設置する人は、個人や企業にかかわらず、設備を定期点検しなければならない。
メンテナンスは義務である以上にメリットも大きい。発電量の低下や火災、漏電などを防いだりすることができるからだ。
ここからは、具体的なメンテナンス方法やメンテナンスに便利なサービスについて解説していこう。
見えにくいトラブルを防いで発電量を守る

発電量が低下する主な要因は、ソーラーパネルの経年劣化や表面に付いたホコリなどだ。発電量の低下は外観からはわかりにくい。野立て(地面に設置する方法)なら表面のホコリは見られるが、屋根に設置したソーラーパネルをチェックするのは難しい。
発電量の低下をいち早く発見できれば、早期対策が取れる。だからこそ、発電量の記録や分析が大切だ。
これは、本業の片手間では大変なため、監視サービスの利用がおすすめだ。
監視サービスは、太陽光発電システムの発電状況をリアルタイムで確認し、記録できる。出力低下や発電停止が起きたときも早急に設置者へ通知してくれるサービスを使えば、迅速な修理手配が可能だ。
監視サービスの活用で太陽光発電のトラブルを迅速に発見し、収益ロスを最小限に抑えられるだろう。
故障や漏電、火災を防ぐ

定期メンテナンスは故障や漏電、火災の予防になる。
たとえば、ソーラーパネルに汚れが付くとパネル内部に影ができる。影の部分には太陽光が当たらず発電もできない。その箇所が発熱し(ホットスポット現象)、セルが壊れて発電不能に陥るケースがある。
ホットスポット現象が起きたときに、付近に可燃物があれば、燃える可能性だってあるのだ。雨でも流れない汚れを定期的にチェックし、洗い流すべきである。
機材の劣化も定期メンテナンスで早めに発見しておきたい。パネルや架台の施工がしっかりしていれば問題ないが、ボルトの弛みや架台の不具合が放置されれば、パネルが強風で吹き飛ばされるリスクが出てくる。発電量のモニターチェックだけではなく、目視による定期的な設備点検も重要だ。
ただ、定期メンテナンスを行っていても、製品に不具合が出てしまう場合がある。
このときに便利なのが一次対応の「駆け付け」サービスだ。パワコンが停止したり自然災害でトラブルが発生したりしたときに、担当者が駆け付けて現状をチェックし、応急措置をしてくれる。一次対応の応急措置をしたあとに、二次対応として点検、修理、交換などの措置を行うのが一般的だ。
定期メンテナンスと合わせて業者が提供している他のメンテナンスサービスを利用すると安心である。
産業用太陽光発電のメンテナンス費用の相場

定期メンテナンスの契約ができる主な業者は2つだ。太陽光発電システムの設置業者と、メンテナンスの専門業者である。
サービス内容や費用は業者によって異なる。
ここでは、「定期点検」「スポット点検(引き渡し前点検)」「パネル洗浄」「修理・交換」の費用相場について説明する。
どれも怠ると発電量の低下や故障の原因となり、注意が必要である。
定期点検
1つ目は定期点検だ。50kW未満の低圧太陽光発電でかかる費用は、年間10万~15万円程度である。
ソーラーパネルやパワコン、架台などの設備点検、パワコンなどの動作確認を行う運転点検、電圧測定や絶縁抵抗測定などが、定期点検で主に行われる。
スポット点検
2つ目はスポット点検だ。定期的にではなく、任意のタイミングで単発的に点検してもらえる。
点検内容は細かく指定できることも多いが、選べるメニューは業者により異なる。費用相場は目視点検で7~10万円程度、電気点検も行うと14万~15万円ほどかかる。
パネル洗浄
3つ目はパネル洗浄。費用は5万円ほど、パネル1枚につき300円程度が一般的だ。
パネル上の枯れ葉や鳥の糞はホットスポットの原因になるため、定期的に取り除くことが大切だ。
野立ての太陽光発電は除草作業も必要

地面に太陽光パネルを設置する場合、雑草対策が必須だ。
雑草がパネルにかかれば発電ロスになり、配線に絡めば漏電や火災、故障の原因になる。野立ての太陽光発電では、除草や防草対策で費用がかかるのだ。
防草シートを敷くなら674円~/㎡で、除草剤の費用は50円~/㎡ほど。草刈りを業者に依頼するには200円~/㎡ほどかかるが、自力で行えば機材や燃料費、交通費などがかかる。雑草が生えづらくなる植物は、種を蒔くのに120円~/㎡ほどかかる。
ただし、除草や防草の効果は永続的ではない。毎年、あるいは10年に一度は劣化箇所の修繕などの措置を取らなければならなくなる。
除草・防草のコストは、一回あたりの費用と頻度によって異なる。事業計画の段階で、メンテナンス方法とコストを計算しておくべきだろう。
野立て太陽光発電の防草・除草にかかるコストについては、別の記事で詳しく紹介する。
【1分で理解】10kW以上太陽光発電 メンテナンス費用の最新相場
産業用太陽光発電のメンテナンスは専門業者に依頼することがおすすめ

メンテナンスを依頼するなら専門業者が安心だ。産業用太陽光発電の専門知識がある、対応に慣れている、緊急時も迅速に行動してくれるなど、多くのメリットがある。特に、遠隔監視や駆け付けサービスをセットで行ってくれる業者がおすすめだ。
販売・施工業者が提供するメンテナンスサービスは、費用が比較的安い。しかし、本来は販売と施行が本業であるため、緊急時でもすぐに駆け付けてもらえない可能性がある。定休日なども手薄になりやすい。
自己メンテナンスの場合は、まず手間がかかる。専門知識がなければ対応しきれず、トラブルが長引いて余分にコストがかかるケースもあるだろう。
メンテナンスの専門業者は、調査・分析・予測・提案・調達・工事・改善の全てを一貫して実施できる。いちいち別の業者を手配する手間が省けるのがメリットだ。
太陽光発電のメンテナンス依頼は、実績豊富な専門業者に任せよう。
産業用太陽光発電の維持費を抑えるなら定期的なメンテナンスをしっかりと行おう
産業用太陽光発電のメンテナンスは必須だ。FIT法でメンテナンスが義務化され、怠れば売電できなくなる可能性もある。メンテナンス不足で発電量の低下や故障が起きれば、余計な費用や手間がかかってしまうだろう。
投資効果を十分に得るために、メンテナンスはしっかり行うべきだ。見えにくいシステムの異常に対応するなら、専門業者への依頼が有効である。
「はつでん管理人」なら、産業用太陽光発電のメンテナンスを安心して任せられる。ぜひ、利用してみてはどうだろうか。
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