電気料金の値上がりを受けて、エネルギー管理システムの「EMS(エネルギーマネジメントシステム)」が注目を集めている。
2011年の東日本大震災により、東京電力の福島第一原発で事故が起こった。多くの原子力発電所は稼働停止となり、代わりに火力発電所を稼働させて電力をまかなっている。しかし、そのあおりを受けて2014年までに家庭向け電気料金は約25%、工場やオフィス向けの電気料金は約40%上昇した。
そこで、ビルや工場、オフィスなどのエネルギー消費量が大きい業界を中心に、電気料金の削減対策として期待されているEMSへの期待が高まっている。BEMS(ビル用EMS)やHEMS(家庭用EMS)を導入する企業や家庭が増えているのだ。
EMSとはどのような仕組みなのか、導入時のメリットや活用方法なども合わせて説明していこう。
EMSの意味や目的を知ろう
EMSは「Energy Management System」の略で、日本語では「エネルギー管理システム」といわれている。電力消費量削減のために、ビルの設備、環境、エネルギーなどを管理するシステムだ。
EMSを導入する主な目的は3つある。
1つ目は、エネルギー使用状況の「見える化」。電気だけではなく、水道やガスなどの使用状況も把握できる。
2つ目はエネルギー使用状況の分析。「見える化」した電気やエネルギーが、いつどこで使用されているのか状況を把握することで、どこに無駄や改善の余地があるのかを分析することができる。
3つ目は経費削減のためのエネルギー利用の改善だ。見える化、データ分析の段階を経た上で、利用状況の改善に取り組める。
EMSを導入すれば、リアルタイムで電力使用量の計測が可能である。自動的に監視と制御ができるため、企業や一般家庭での無駄なエネルギーを削減できるのだ。
ところで、エネルギー使用状況の見える化とは、具体的にはどういうことなのだろうか。EMSの主な目的である「エネルギーの見える化」について、次から詳しく説明していこう。
EMSのポイント「エネルギーの見える化とは」
「エネルギーの見える化」とは、リアルタイムでエネルギーの消費量を確認できることである。
これまでは、電気などのエネルギーをどのくらい使用したのかを知る機会や方法はあまりなく、電気料金の請求書からざっくりと知る程度であった。何にどのくらい電気を利用したのか、具体的なデータを正確に知る術がなかったのである。
そこで、どの機器がどれだけの電力を消費しているのか、電気使用量が多い箇所はどこなのかといった、より詳しい情報やデータをリアルタイムでモニター表示できることこそが「エネルギーの見える化」なのである。
次からは、EMSについてさらに詳しく理解するために、見える化の具体例やデータ分析について説明していく。
「エネルギーの見える化」で何が見える?
EMSで使用エネルギーを見える化すれば、現在のエネルギー使用状況はもちろん、無駄なエネルギー消費が行われている時間帯や機器なども発見できる。ここでは、エネルギー管理システム「明電スマートEMS」を例に説明をしよう。
たとえば、電気使用量のグラフ化によって、電力消費量のもっとも激しい時間帯を把握することも可能である。収集したデータを分析して、具体的な改善策を立てられるのだ。
エネルギー使用状況はトレンドデータとして、折れ線グラフで表示される。トレンドデータとは、時系列変化に重点をおいて分析したデータのことだ。折れ線グラフは、リアルタイムトレンドデータとヒストリカルトレンドデータの2種類で表示できる。
リアルタイムトレンドデータでは1、5、10秒周期、ヒストリカルトレンドデータでは1分周期でデータ収集を行う。2種類のデータをチェックすることで、より詳しい分析が可能だ。
こういった複数のグラフを合わせて解析すれば、瞬時にエネルギー消費の無駄を把握できる。さらにエネルギー使用量の監視機能を使えば、日単位、月単位で電気やガスなどの使用量を管理できるだろう。
EMSのメリット・デメリットを解説
EMSの見える化について一通り説明してきた。ここからは、EMS導入に際して、具体的なメリットやデメリットを紹介していこう。
EMS導入で得られる多くのメリット
EMSのメリットは、省エネ対策の効果を経営者に説明しやすくなる点だ。
電気やガス、水道などの使用状況は、グラフやチャートなどわかりやすい形で表示される。見える化された燃料の消費状況から、経費削減の計画実行や評価がスムーズにできるようになる。企業全体の省エネ意識の向上も期待できるだろう。
また、EMSによってエネルギー効率の悪い機器の特定も可能だ。省エネ対策として機器の買い替えを行えば、生産性も高まる。
さらに、EMSは補助金が受けられる点も大きなメリットだ。経済産業省では、省エネルギー・省電力設備導入事業に対して、エネルギー使用合理化等事業者支援補助金を用意している。最大で費用の2分の1の補助金を得られる。
EMS導入で懸念されるデメリット
企業にとってEMSのメリットは大きい。ただし、EMS自体のデメリットではないものの、導入の際にネックとなる点が2つある。
1つは、高額の初期費用がかかることだ。
システム構築の費用目安は規模によって異なる。小規模事業所の場合は250万~1000万円ほど、商業施設や学校、病院などは1000万~8000万円ほどだ。工場やプラントなどの大規模事業所になると1億円を超えるケースもある。
また、いまある設備がEMSで管理および制御できる仕様ではなく、対応する機器に入れ替える場合、その費用はさらにふくらんでしまう。
もう1つは、導入先にエネルギーの専門家がいないと、効果的なEMS運用が難しくなる点だ。
エネルギー管理の知識やノウハウを持たずにEMSを導入しても、経費削減に向けた効果的な判断を下すのは難しいだろう。エネルギーの情報を把握できるだけにとどまってしまい、肝心な経費削減に繋がらない可能性がある。
メリットの多いEMSではあるが、今ある設備や機器、専門家の有無などを確認した上で、導入計画を立てるべきだろう。
市場拡大が期待される自家消費型EMS!省エネ対策として取り入れよう
エネルギーの使用状況を見える化し、省エネ対策を維持・推進していくために、EMSは非常に効果的なシステムである。
エネルギーコストを削減するなら、EMSに加えて自家消費型太陽光発電の導入がおすすめだ。電気料金のさらなるコストカットが見込める。
しかし、EMSもそうだが、太陽光発電の導入にもまとまったコストがかかる。少しでも初期費用を抑えるために、ぜひタイナビNEXTの一括見積もりを利用しよう。
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