2011年の東日本大震災がもたらした甚大な被害は、企業における災害対策への関心を高めた。政府は事業継続ガイドラインを公表し、あらゆる危機的事象を乗り越えるべく、平常時から防災対策に取り組むよう促進している。
災害時の被害を最小限に抑えるには、企業全体が災害への意識を高く持ち、日ごろから備えていく必要がある。
今回は、企業における災害対策の考え方や災害対策に取り組む企業の事例などを紹介しよう。
民間企業が対象の災害対策ガイドラインで示されたもの
内閣府は従来の防災対策を踏まえた上で、災害対策ガイドラインを策定している。ガイドラインの対象者は、すべての民間企業や組織だ。
ガイドラインの目的は事業継続マネジメント(BCM)の普及および促進である。事業継続計画の決定と改善を目指し、企業活動の取り組みの重要性や必要な実地指導などを明記している。
ガイドラインが推奨する主な取り組みとして、4つ紹介しよう。
- 1つ目は、災害時における重要業務の選択だ。
企業や組織、産業など経営全体を見据えた上で、復旧するべき事業所や設備を選択する。 - 2つ目は、限られた資源を被災地で有効活用するための投入策。
- 3つ目は、目標とする復旧時間の決定だ。
重要業務の停止は、市場の動きにもストップをかける。業務停止の許容期間を見極めつつ、復旧までの目標時間を設定する必要がある。 - 4つ目は、サプライチェーン(供給網)も含めた災害対策だ。
被災地に取引先がある場合、被災地の状況や、災害によって自社の業務停止にどのような影響が出るのか評価が必要である。
緊急時の対応力が強化されれば、事業の早期復旧などが期待できる。業務停止の回避は、取引先からの信頼につながるだろう。顧客の流出を防げれば、マーケットシェアの維持も可能ということだ。
災害対策の取り組みで得られる、さらなるメリット
災害対策のメリットは、災害に強くなることだけではない。社内・社外の人々から信頼されやすくなり、企業価値が向上するメリットがあるのだ。平時に得られる災害対策のメリットを紹介しよう。
災害への強さが企業価値を高める
災害対策に取り組む大きなメリットは「企業価値の向上」だ。従業員はもちろん、取引先や消費者、株主、行政に至るまで、災害時の事業継続対策(BCP)がしっかりしている企業は評価されやすい。従業員の安定性と、取引先との関係強化も期待できるのだ。
事業継続対策の策定過程は、経営戦略の立案にもなる。災害時にどの事業を優先すべきか検討しておけば、自社における業務の重要性や位置づけが把握できるだろう。
企業が今から取り組むべき災害対策
従業員や顧客が「防災対策が不十分」との印象を抱いてしまうと、企業のイメージダウンにつながる。防災対策は常に見直し、ブラッシュアップしよう。
今からできる具体的な災害対策を3つ紹介する。
- 1つ目は、事業継続のためのデータ保持だ。
バックアップデータを遠隔装置で保管する、システムをクラウドに移行するなどの対策が必要である。災害時の停電に備えて、非常用電源として活用可能な太陽光発電システムやUPS(無停電電源装置)などの利用もおすすめだ。 - 2つ目は、自社設備に関する対策だ。
地震や水害などに備えて、オフィスや工場など自社設備の点検が不可欠である。オフィス用品の落下を防ぐために、金具や落下防止バーなどで固定することも重要だ。 - 3つ目は、従業員や顧客の信頼確保だ。
防災訓練は定期的に実施し、災害時の安否確認はマニュアル化しておく。配布や掲示によるマニュアルの周知も徹底しよう。
自治体によっては、交通網の麻痺が生み出す帰宅困難者の抑制について、企業の責任で対策するよう努力義務が課せられている。水や食料の備蓄が最も重要だが、電源(電池・発電機)やラジオも情報収集に役立つため推奨される。
従業員と事業を守るための災害対策は、今からでも遅くない。実際の企業が直面した災害事例を参考に、これからの対策を考えてみよう。
企業が取り組む災害対策の事例
災害対策が事業継続・早期復旧に役立ったとみられる事例を紹介しよう。
スーパーマーケットの事例
新潟県でスーパーマーケットを経営する会社の事例だ。災害対策によって損失を最小限にとどめ、地域社会への貢献も実現している。
2004年の新潟県中越地震で県内の22店舗が被災、中でも甚大な被害を被った3店舗は閉鎖を余儀なくされた。この被災体験から、被災地で必要とされる商品の割り出し、商品調達先の確保、物流センターの増設、地震計と連動できる緊急停止装置の設置などを行ったのだ。
その後の2007年の新潟県中越沖地震では7つの被災店舗が出た。しかし、事前の対策により4店舗は当日、2店舗は翌日、1店舗は翌々日に営業を再開している。防災と事業継続の対策によって、被災店舗は合計3日で営業再開を果たした。
自動車部品メーカーの事例
従業員による防災および事業継続意識の高さが功を奏した事例だ。
新潟県の自動車部品金型メーカーでは、設備の復旧手順をマニュアル化し、パソコンで情報共有を行っていた。さらに毎月、全社勉強会を開いて従業員一人ひとりへの周知を徹底している。
そのおかげで、震度6強の地震に見舞われた際も、機械や設備の点検、整備がスムーズに済んだ。業務の遅れをたった1日にとどめ、製品の出荷にこぎつけた。
電子部品メーカーの事例
熊本県の電子部品メーカーでは普段から、災害訓練や備蓄の用意など、災害に備えていた。
2016年の熊本地震で被災したが、予定より2週間も早く生産の再開にこぎつけている。使用設備はデリケートな手入れが必要な精密機械だった。にもかかわらず予定より早く業務を再開できたのは、普段の訓練と備蓄によるところが大きい。
企業が災害対策として太陽光発電を取り入れるメリット
災害時の電力供給体制の見直しは、2011年の東日本大震災がきっかけだ。原子力発電所が止まり、多くの企業が業務活動の停止を余儀なくされた。
太陽光発電の導入は、災害時に非常用電源として利用できる点がメリットとして挙げられる。原子力発電所へ依存することなく電力利用が可能なため、災害時でも重要業務の継続ができるなどBCP対策としても安心だ。
災害時だけでなく、平常時にも大きなメリットがある。太陽光発電による電力の自家消費によって、電気代の値上がり対策になる。東日本大震災以降、電気代の値上がり傾向は続いており、そのメリットはより大きなものとなる。
太陽光発電の導入は、環境対策に取り組む企業であることのアピールも可能だ。取引先に対して、環境への貢献を求める大企業が増えている。太陽光発電はCO2の排出が非常に少ないクリーンエネルギーだ。中小企業にとっては、ビジネスチャンスの拡大が期待できるだろう。
企業の災害対策は防災と事業継続が大切!太陽光発電の自家消費で備えよう
政府の災害対策ガイドラインにもあるように、企業の災害対策は防災と事業継続の両面から行う必要がある。今回紹介した内容は、どの企業も今すぐ取り組むべき対策だ。
現代の企業活動には電気が不可欠である。災害時も平常時もメリットが大きい発電手段の一つは、太陽光発電だ。特に自家消費を目的とした設備は、優遇税制や補助金の対象になる。この機会に導入を検討してみてはどうだろうか。
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