工場や事業所で使用される電気量は家庭用よりもはるかに大きいため、電気料金のコストも大変なものです。こうした電力にかかるコストを太陽光発電で浮かせたいとお考えの方も多いのではないでしょうか。
この記事では、事業用に太陽光発電を自家発電するメリットやデメリット、導入する際に考えられるリスクなどについて解説します。
太陽光発電を事業で使うメリット
事業所の屋根や敷地内に産業用太陽光発電を設置し、電力を自家消費することには、さまざまなメリットがあります。
自家消費部分の電気代が削減できる
産業用太陽光発電で得られた電力を自社内で使うと、電気代を大きく削減できるのが最大のメリットです。自家発電した電力をつかえば料金が発生しないので、電気代の節約につながります。
デマンドのピークを抑える効果
太陽光発電の自家消費では基本料金を下げられる可能性があります。繁忙期や夏のエアコン利用など、電力需要のピーク時にあわせて料金が変わるタイプの契約だと効果があります。
日中に電力需要のピークが来るタイプの事業なら、太陽光発電の自家消費でピーク時に購入する電力量を抑える事ができます。これによって、電力の契約内容自体を見直すことも可能なのです。
再エネ賦課金の支払いも回避
電気料金を押し上げている要因の一つに再エネ賦課金があります。再エネ賦課金とは、固定価格買取制度(FIT)における電力の買取り費用の一部を、電気を利用しているすべての人に負担してもらおうというものです。
再エネ賦課金は、電力会社から購入する電力量に応じて課金されますが太陽光発電の自家消費分に対しては、課金されません。再エネ賦課金の支払い免除をしていない企業では、電力コストを削減する効果があります。
再エネ賦課金は今後も増額傾向が続く見込みです。自家発電のメリットは今後ますます高まるでしょう。
屋根にパネルを敷く場合は遮熱効果がある
夏の空調対策に、屋根の遮熱を検討している方も多いのではないでしょうか。
屋根の遮熱対策には、塗装やシートを用いるのが一般的でしょう。実は、太陽光パネルを設置するのも効果的なのです。
屋根に太陽光パネルを設置すると、直射日光を遮り、屋根の温度上昇を防ぐことができます。室内の温度上昇を防ぎ、空調の負荷を下げて電力コストが抑えられるのです。
そのうえ、太陽光発電で電力を得ることも可能です。太陽光発電は遮熱効果と電力の両方が得られる一石二鳥の対策方法で、特に夏場に温度が上昇しやすい折板屋根の工場などにおすすめです。
固定買取り制度(FIT制度)の期間が長い
固定価格買取制度(FIT制度)の期間が長いのも、産業用太陽光発電のメリットです。固定価格買取制度は、太陽光発電によって発電した電気を電力会社に買取ってもらえる制度です。
10kW以上の産業用太陽光発電は、買取期間が20年間と定められています。発電した電力を全て売る「全量売電」と、自家消費した余りの電力を売る「余剰売電」のどちらを選んでも、売電期間は変わらません。
家庭消費用太陽光発電の10年間と比べて2倍の期間、安定的に利益をあげられます。
FITが終わった後は?
21年目からはまだ明らかでない部分が多いのですが、世界中で高まる再エネ電力のニーズがありますので、売電は継続できる可能性が高いです。
ひとつ言えるのは、FIT以降の売電価格が下がるようなら、自家消費の経済的メリットがますます高まるということです。
非常用電源としての活用ができる
停電時の非常用電源として活用できるのも、産業用太陽光発電のメリットです。2011年に発生した東日本大震災においても、非常用の太陽光発電が活躍しました。
太陽光発電によって、電力が復旧していない地域や避難所でも発電することができたのです。
産業用太陽光発電を設置すれば、自然災害など万一の場合でも非常用電源として利用できます。電気がないばかりに事業が不安定になるリスクは低減できるということです。
事業に電気を使う場合は優遇税制が使える
国も自家消費型太陽光発電の普及を促進するために、優遇税制や補助金などの支援を行っています。
産業用太陽光発電で得た電力を事業に使う場合には、「中小企業経営強化税制」や「中小企業投資促進税制」を利用できます。
ほかにも経費として計上できる部分がたくさんありますので、ぜひご相談ください。
企業イメージの向上につながる
太陽光発電システムを導入すれば、環境問題に積極的に取り組んでいる企業であることをアピールすることが可能です。
地球温暖化や資源枯渇などが懸念されるなか、どんな企業であっても環境への取り組みが求められるようになりました。企業が環境や社会に貢献する活動をしているかという観点から投資先を選ぶESG投資も規模が広まる一方です。
今後、どれだけ環境問題に取り組んでいるかが、取引する企業を選ぶ際の判断基準となることも予想されます。
CO2の排出がなく、枯渇する心配のない自然エネルギーを活用した太陽光発電を導入することが、企業イメージを大きく高めることにつながるのです。
産業用太陽光発電を事業で使う際のデメリット
多くのメリットがある産業用太陽光発電だが、デメリットはないでしょうか。ここでは、産業用太陽光発電を事業で使う際のデメリットについて紹介します。
初期投資コストが高い
初期投資コストが高いことが、産業用太陽光発電のデメリットとして挙げられます。
住宅用太陽光発電と違い、産業用太陽光発電は主に事業用の発電を目的としているため、多くの太陽光パネルや周辺機器、広い屋根や土地なども必要となります。そのため、どうしても総額費用が高くなりがちです。
導入を検討する際には、売電でどれほどの収益が上げられるのかを確認しましょう。電力コストの削減効果も含めてシミュレーションし、費用対効果を緻密に計算しましょう。太陽光発電の設置業者に、見積もりついでに代行してもらうこともできます。
火災や自然災害によるリスクがある
太陽光発電には、火災や自然災害によって感電が起こったり、設備が損傷したりするリスクがあります。
火災発生時にはパネルが壊れても電気が通っている可能性が高いため、消火活動の水で感電する恐れがあるのです。洪水や冠水などによる漏電の危険性もあります。
地震や台風によって太陽光発電設備が壊れてしまうリスクも否定できません。太陽光パネルやパワーコンディショナーなどが破損すると、経済的にも大きなダメージを受けることになります。
自然災害による故障などに備えて、損害保険などを利用するのがよいでしょう。
太陽光発電を検討するときのポイントと対策
産業用太陽光発電には、住宅用太陽光発電とは違ったリスクが考えられます。ここでは、産業用太陽光発電を事業で使用する際のリスクと対策について紹介します。
購入時は適正な価格かを比較して見極める
事業用の太陽光発電は規模が大きい事もあり、投資金額も高額です。そのため、複数の業者から見積もりをとって、相場をきちんと把握することが大切です。
見積もりの内容については、詳細にチェックしましょう。フェンスや整地費用などすべての項目が見積もりに含まれているか。どのメーカーの部材を使用するか、なども細かく精査するのが重要です。
発電シミュレーションは正確か、根拠のある収支計算になっているかもチェックする必要があります。総額が安いからと安易に発注してしまうと、後悔することにもつながりかねません。
近隣トラブルに気をつける
事業用の太陽光発電の場合、近隣トラブルに気をつけることも重要になります。産業用太陽光発電は規模が大きく、近隣トラブルの種も点在します。ひとたび事案が起きてしまえば、その対処に労力とコストがかかってしまうリスクがあるのです。
パネルの反射光やパワコンの騒音など、近隣住民の健康に影響しかねない問題の種です。とくに反射光は、訴訟になった例もあります。設置前に対策をしましょう。
また、雑草が生えることで害虫の住処になりやすいなど、住居の快適性を損なう問題が発生する可能性もあります。設置後のメンテナンスも検討しておきましょう。
太陽光発電の最大のネックは初期費用
産業用太陽光発電には住宅用太陽光発電と共通するメリットやデメリットがありますが、事業規模が大きいがゆえに独自の特徴もあります。たとえば、FIT買取期間が長い、優遇税制を利用できる、企業イメージをアップできるなどは、産業用太陽光発電の大きなメリットです。
産業用太陽光発電を導入する際のデメリットとして、高額な初期投資が必要になる点が挙げられます。初期投資コストをできるだけ抑えて、費用対効果を高めるために相見積もりは欠かせません。
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