環境問題についての関心が世界的に高まり、国をあげた取り組みが各所で見られるようになった。環境配慮への動きはビジネスの世界にまで至し、事業で生じる温室効果ガス削減に向けた実践的な国際イニシアチブ「RE100」へ加盟する日本企業も登場した。
RE100は企業活動の規模が大きく、環境負荷を高めやすい大企業が中心となるプロジェクトである。ただし、サプライヤーとして製品製造に関わる中小企業にとっても、無関係ではいられない。つまり、CO2排出量削減を進める大企業が、中小企業にも省エネ化・再エネ化を求めるようになるということだ。
別の見方をすれば、中小企業がRE100の目指す目標を意識し、事業の再エネ化に取り組むことでチャンスが増える可能性が高い。
この記事ではRE100とは何か、事業者にどのような影響をもたらすかについて解説していこう。
100%再生可能エネルギーを目指す「RE100」とは
「RE100(アールイーヒャク)」とは、国際環境NGO「The Climate Group」が創設した環境プロジェクトである。事業活動がもたらす環境負荷を減らすため、使用するエネルギーを、100%再生可能エネルギーに転換することが目標だ。
ここで中小企業が注目するべきは、100%再エネ化がサプライチェーン全体の課題として捉えられることだ。再エネ化の動きがRE100に加盟した大手企業だけに留まらず、仕入れ先などの関連企業も含まれる。
つまり、中小企業はRE100に加盟せずとも、CO2の排出者として当事者にされたのである。
ひとつ例をあげよう。RE100に参加した企業にはマイクロソフト、アップル、イケアなど、世界に名だたる大企業がいる。なかでもアップルは、サプライヤーに対しても再生可能エネルギーの導入を呼びかけた。RE100に加盟した大企業が、取引先を選定する基準に「再エネ化に力を入れていること」を加えたのだ。
中小企業にとって、再エネ化が、RE100に加盟する大企業との取引機会に関わってくる。製品の外の強みとして、取引チャンスを作り、ビジネスの継続性を高めるのだ。
再エネ化は、太陽光発電などで創った電気を事業に使ったり、エネルギーの環境価値を証書として買う、再エネ100%の電気料金プランを契約するなどの方法がある。再生可能エネルギーへの転換を検討しよう。
RE100に対する日本企業の動き
2017年4月、日本企業で初めてRICOHがRE100へ参画した。RICOHは温暖化防止と省資源を目標に、あらゆる供給網に対してもCO2排出ゼロを目指すとした。
その後、イオン、アスクル、大和ハウス工業、城南信用金庫などが次々とRE100に参加している。しかし、世界から見た日本の参加数は決して多いとはいえない。
RE100に参加する企業は、自社だけでなく関連会社や取引先にも協力を求めている。民間が主導して再エネ化を進めるRE100により、社会全体で省エネに取り組んでいく流れができることも期待されているのだ。
環境省がRE100に参加、50社の加盟も目標に支援
RE100が耳馴染みがないのは、現時点で国内の加盟企業がそれほど多くないためだ。再エネ化の道筋を作れず、加盟するために超えるべき壁が多すぎたのが一つの理由だ。
そこで、環境省が自らRE100へ参画するとともに、日本企業の加盟数を50社に増やすという目標で再エネ化を促進する考えを示した。
環境省は、省内で使用するエネルギーを100%再生可能エネルギーに転換する目標を掲げた。そこで得られた経験や知識を広め、再生エネルギーを選択していく需要型の取り組みを行うとのことだ。
さらに、環境省は公的機関では初の「RE100アンバサダー」となった。勉強会の開催や書類作成のアドバイスなど、RE100への日本企業の参加を支援する方針である。
RE100に参加するメリット
では、企業にとってRE100に参加するメリットには何があるのだろうか。
まず、RE100が目指す環境問題は世界的な課題であり、企業の姿勢も問われる時代になっていることが挙げられる。RE100への参加で、世界の企業と協力して環境問題に取り組むことができるメリットがあるだろう。
また、環境問題に対する企業の姿勢を示すことができるメリットもある。これは、企業に関心のある投資家から将来性を高く評価されるポイントとなるのだ。
さらに、企業が直接参加しない場合でも、RE100へ参加している企業との取引で再エネ化への取り組みに協力を求められる可能性がある。RE100が掲げる省エネについて理解し実行することで、参加企業から選ばれるメリットもあるだろう。
RE100への参加方法は?参加基準と申請方法
では、RE100へ参加するためには何が必要なのだろうか。RE100には一定の参加基準があるので次に紹介する。また、参加する際の申請方法、掲げるべき目標についても解説していく。取引先のRE100参加企業の目標を理解するためにも、参加方法を知っておくといいだろう。
RE100に参加するには基準がある
RE100へ参加する主な基準としては、次のようなものが示されている。
まず、グローバル企業や世界的なブランドを持つ企業などが参加可能とされている。また、2050年までに100%再生可能エネルギー達成すること、再生可能エネルギー推進のため企業側から政策へ関与することも求められている。
RE100へ参加する企業と取引がある、あるいは今後の取引を目指す場合にも、RE100がどのような目標を掲げているのか把握することが大事だろう。そのためにも、参加基準を押さえておきたいものである。
申請には100%再エネの達成目標を示す必要がある
RE100に参加するには、RE100に関連する自社の資料を事務局のメールに英文で提出する。申請には、会社情報や再生可能エネルギー100%達成目標とする年、達成の方法などを記載するよう求められる。
達成の方法としては、自社の敷地内に太陽光発電を導入し、自家発電により事業に必要な電力をまかなう方法がある。また、自然エネルギーを利用した「グリーン電力」を購入するという方法も考えられるだろう。
再生可能エネルギーに関する内容については、第三者による確認を得て透明性と信頼性を持たせなければならない。
申請手続きに必要な参加申込書は、RE100の事務局で入手可能である。参加条件や技術基準の詳細についても、分からない点については事務局へ問い合わせるといいだろう。
自家消費用太陽光発電でRE100が目指す再エネ化に取り組む
企業は自家消費型太陽光発電の導入により、100%再生可能エネルギーを目指すことができる。自家消費型太陽光発電とは、自社で作った電力で事業に必要なエネルギーを自給自足するシステムである。
たとえば、工場や店舗の屋根に太陽光パネルを設置し、発電した電気を使い事業を行う。この場合、電力は自給自足できるので電気代は大幅に削減できる。
電気代は石油価格の値上がりなどで高くなっていくと考えられているが、太陽光発電の導入コストは年々下がっている。初期費用の回収期間も短くなるため、自家消費型太陽光発電は導入しやすくなっているといえよう。
さらに、使わなかった電気を蓄電池に貯めておけば、多くの電気を必要とする場合にも電力会社から購入する必要はなくなる。
自給自足を目指し再エネ化へ向かうことは、引いては企業としての評価が高まることへつながるだろう。それは、RE100に参加している企業との取引が生まれるチャンスかもしれない。
世界に向けて再エネ化への取り組みを発信!RE100の削減目標を目指して
再生可能エネルギーへの転換は、世界中で多くの企業が取り組んでいる課題である。RE100に参加することで、環境問題に対する企業としての姿勢を示すことができるだろう。
100%再生エネルギーへの転換を目標に掲げる企業として、世界的な評価も高まる。また、RE100参加企業はサプライヤーに対しても再エネ化を求める傾向があることも忘れてはいけない。
RE100に参加する企業との取引を目指すなら、自ら再エネ化に取り組む必要がある。そのためにも、自家消費型太陽光発電を導入して自給自足や再エネ化を目指していこう。
よく読まれている記事
太陽光発電はBCP対策に使えるか? 自家発電システムをもつべき理由
太陽光パネルにはどんな種類がある?素材や形状の特徴
【2023年】法人向け自家消費型太陽光発電の補助金情報は?産業用は税制優遇も可
太陽光発電の土地の広さと規模は?発電量の目安や設置面積の考え方を解説!
使わなくなった農地を有効利用!太陽光発電に転用するためのメリットや注意点
10kW以上太陽光発電「50kWの壁」で変わる手続きと管理コスト